おはようございます。
弁理士の渡部です。
この特許侵害訴訟の経緯を説明しますと、第一審の東京地方裁判所では、サトウの切り餅が越後製菓の特許を侵害しないと判断されました。
ところが、第二審(控訴審)の知的財産高等裁判所では、一転、サトウの切り餅が越後製菓の特許を侵害すると判断されました。
侵害と判断されたので、その結果として、サトウの切り餅の製造・販売の差止、製造装置の廃棄、約8億円の賠償金の支払いが命じられました。
第一審と第二審で特許の侵害・非侵害が分かれたのは、特許の範囲の解釈につき異なる判断がなされたからです。
越後製菓の特許の範囲は、「切り餅の上面又は下面ではなく側面に切り込み部を設け」と記載されていました。
第一審では、上記記載は、上面又は下面には切り込み部を設けず、側面にのみ切り込み部を設けると解釈するのが妥当であり、上面及び下面に切り込み部が設けられた「サトウの切り餅」は、越後製菓の特許を侵害しないと判断しました。
これに対し、第二審では、上記記載は、側面であることを明確にするための記載であり、上面又は下面に切り込み部を設けることを除外するための記載ではないと解釈するのが妥当であり、上面及び下面に切り込み部があるかどうかにかかわらず、側面に切り込み部が設けられた「サトウの切り餅」は、越後製菓の特許を侵害すると判断しました。
特許の世界は、言葉の解釈一つで命運が分かれますので、如何に言葉の一つ一つが重要であるかがこの判決からも理解できます。
佐藤食品工業は上告する方針のようですので、最終決着は、最高裁に持ち越しになりそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120322-OYT1T01010.htm?from=main1