おはようございます。
弁理士の渡部です。
本日は、先のブログ「かに道楽事件『時間が経てば経つほど風化』」の続きです。
4つの記事を通じて先使用権には3つの大きな壁があることをお話しました。
多くのビジネスは法律による規制を受けますが、自社のビジネスが「例外」を主張しなければならない立場には決して置かないということが重要です。
今回の事件でいえば、つまりこういうことです。「商標登録を取得すること。」ただそれだけでよいのです。
そうすればそもそも先使用権を主張する必要がないからです。
商標登録を取得する意味は奥深く、自社が単に商標を使えるという意味にとどまらず、実はこうした訴訟の場面において「例外」を主張する立場に自社を置かないというリスクヘッジの意味が含まれているのです。
法律は、「原則」と「例外」の2段構えの構成になっています。
「原則」と「例外」は、決して同じウエイトで評価されません。
制度は、作った人が原則どおり運用したいので「原則」が優遇されるのは当然だからです。
法律だと分かりにくいかもしれませんが、社会のルールに照らしていただければ分かりやすいと思います。
例えば、「出勤時刻は9時である。ただし、交通機関の遅延その他のやむを得ない理由がある場合は、遅刻を許容する。」という決まりがあったとします。
これだけをみれば、9時前に出勤することはOKですし、やむを得ない理由があれば9時以降に出勤することもOKです。
でも、9時前に出勤する人と、9時以降に出勤する人のハードルと評価は同じでしょうか。
9時前に出勤する人は、9時前というハードルをクリアするだけです。
ですが、9時以降に出勤する人は、やむを得ない理由という高いハードルをクリアしなければならず、クリアできなければ厳しい評価が待っています。
このような決まりになっているのは、会社は9時前に出勤する制度を運用したいからです。
法律もこれと同じにできていて、「原則」の道を通るのが安全に設計されているのです。
ですから、ビジネスを効果的に成長させるため、法律上のリスクにおいては、できるだけ「原則」の側に立場を置くように商標登録などを手当てすることが重要です。
自社のビジネスに何の法律が関係しその法律において何が「原則」で何が「例外」かを網羅的に把握することは、経営者にとって困難でしょう。
専門家は法律の水先案内人。専門家を活用するメリットの一つは、法律上「原則」の側に立場を置くようにビジネス上行動できる点にあります。
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