おはようございます。
弁理士の渡部です。
特許の文章は分かりにくい言葉で書かれていて、読みにくい。
そう感じている人は多いのではないでしょうか。
そこで、「もしもドラえもんの秘密道具が特許出願されたら」というテーマで特許の文章を分かりやすくお伝えします。
本日は、「どこでもドア」について考えてみます。
引用:http://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/contents/tool/ta.html
「どこでもドア」について特許のクレームを書くと、例えば、次のような感じになります。
※分かりやすくするために、各部品の関係は省略しています。※
(2)ドアと、
(3)ドアノブと、
(4)現在地点から離れた空間を通行可能に接続する空間接続手段と、
を備えることを特徴とするドア構造体。
残念ながら、現在の技術では(4)は実現できないので特許を受けることができません。
現時点では未完成の発明だからという理由です。
しかし、将来技術が進歩し、もし(4)を実現する技術が発明されたら、そのときは特許を受けることができます。
さて、特許を受けられるかどうかはともかく、仮に特許が成立した場合を考えてみましょう。
他社の製品が特許権の侵害かどうかを判断する場合は、他社製品が(1)~(4)のすべてを備えているかどうかを確認します。
(1)~(4)のすべてを備えている場合は、「どこでもドア」の特許権を侵害することになります。
これに対し、(1)~(4)の1つでも備えていない場合は、「どこでもドア」の特許権を侵害することにはなりません。
例えば、鍋のフタを開けたら別空間に移動できる「どこでも鍋」は、(1)~(3)を備えていないので、「どこでもドア」の特許権を侵害することにはなりません。
しかし、そうなってしまうと、「どこでも鍋」だけでなく、引き出しを開けたら別空間に移動できる「どこでも机」や、フタを開けたら別空間に移動できる「どこでもトイレ」など、類似品が溢れてしまい、困ってしまいます。
では、どうしたらよいのでしょうか。
(1)~(3)は、そもそもすでに知られた部品ですから、特許のクレームに書いても特徴になりません。
そこで、(1)~(3)を外し、次のように書くことを考えてみます。
を備えることを特徴とする構造体。
この内容で特許を取得できれば、(4)だけを備えていれば特許権の侵害となるので、「どこでも鍋」も「どこでも机」も「どこでもトイレ」もしっかりと押さえることができます。
特許のクレームに書く部品は、できるだけ少ない方が広く強い特許権となることが分かります。
特許や商標登録など知的財産に関してお困り事やご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせは、こちらから。