こんにちは。
鎌倉・湘南地域の弁理士、渡部です。
お盆休みのためか、鎌倉は観光客で賑わっていました。
なかなかの人出ですね。
本日は意匠法改正の話題です。
意匠法が大きく改正されることが報じられました。
特許庁が2019年の通常国会への提出を目指す意匠法改正案の全容が分かった。保護期間を5年延ばして25年にするほか、保護の対象にウェブサイトのレイアウトや建築物の内外装などを加える。企業が継続して使うデザインも保護しやすくする。技術に大きな差がない商品やサービスはデザインが売れ行きを左右する傾向が強まっているため、権利保護を強める。(2018/8/17日本経済新聞)
報道によれば改正案では、以下の3つの点が大きなポイントになっています。
(1)現在の保護期間は20年であるが、これを5年延ばして25年にすること
(2)ウェブサイトのレイアウトを保護の対象とすること
(3)建築物の内装又は外装を保護の対象とすること
改正の趣旨は、デザインとブランドの保護です。
これには、短期的な取引の観点と長期的な取引の観点があります。
短期的な取引の観点からは、商品やサービスはデザインが売れ行きを左右する傾向が強まっていることから、企業が採用するデザインの保護を強化し、企業がデザイン開発に力を入れて収益を確保することを促すことが狙いです。
(2)(3)の改正点は、これまで意匠の保護対象ではなかった「ウェブサイトのデザイン」「建築物の内装デザイン」「建築物の外装デザイン」を新たに保護対象として認め、デザインをより幅広く保護しようというものです。
(2)については私たちに寄せられる問い合わせで多い部分です。
これまでウェブサイトのデザインは著作権でしか保護を受けることができませんでした。
著作権は、意匠登録と異なり、真似をしたという事実が必要ですが、真似したかどうかは主観の問題ですからこれを立証することは簡単ではありません。
この点、意匠法でウェブサイトのデザインが保護対象となれば、真似したかどうかでは関係なく、デザインを比較して似ているかどうかの客観的な判断で侵害かどうかを判断することができるので、現行の保護制度とは大きな違いが生み出されます。
長期的な取引の観点は、企業が優れたデザインを長く使い続けることで、アップルが作るイメージのように「あのデザインといえばあの企業だね。」という印象づけを消費者に対して行うことにより、消費者が企業を気に入って繰り返し購入することにつながります。
これをブランド化といいます。
ブランド化は、代表的には商標などのマークを用いて行うものですが、デザインを用いて行うこともあります。
この保護を強化し、企業がブランド化に力を入れて収益を確保することを促すことが狙いです。
(1)の改正点は、ブランド化のためには、デザインを顧客に印象づけるためにはデザインを長く使い続けることが必要となるので、これまでの20年から25年の保護とすることでブランド化の取り組みを保護しようというものです。
25年の保護期間は、国際的にみて欧州など並び最も長い期間になります。
ブランドの観点からすれば本来的には有限の期間ではなく、商標のように更新を経て半永久的に保護する制度が馴染むのですが、デザインを意匠で保護するとなると、どうしても保護期間の上限を設けざるを得ません。
25年間使い続け一定の認知度を得たデザインについては、商標登録を認めるなどして、半永久的に使い続けられるように切り替えられるとよいです。
(2)(3)の改正点は、ブランド化にも影響します。コメダ珈琲の事件が記憶に新しいですが、店舗の外装デザインなどでお店を識別することが行われています。
この事件は不正競争防止法で保護を受けることができましたが、コメダ珈琲のように店舗の外装デザインが有名であったという条件が必要になります。
知名度がないデザインが保護されるケースではないので、多くの企業には当てはまらない事例です。
この点、意匠法で店舗の外装デザインが保護対象となれば、意匠登録を受けられれば知名度にかかわらず保護を受けることができるので、現行の保護制度とは大きな違いが生み出されます。
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