おはようございます。
弁理士の渡部です。
NHKの放送だけを受信しない装置「イラネッチケー」という製品が販売され、話題を呼んでいます。
テレビがある場合はNHKの受信料を支払うことが法律で義務化されているのですが、この製品は、テレビを所有されている方がNHKと契約しない自由を確保することを目的に開発された製品です。
引用:http://getnews.jp/archives/996620
この製品にまつわるお話として、「NHKだけ映らないテレビ」は、NHKがデジタル放送技術に関する多くの特許を持つため、実際の開発・販売が難しいといわれています。
そこで、本日は、特許と法律というお話をしたいと思います。
もう少し詳しくというと、法律を使った特許の活用というお話です。
特許の取得を検討する場合、どのような範囲で特許を取得するかということを考えます。
例えば、全体と部分の関係で考えると、
<全体>システム全体やビジネスモデル全体の枠組みについて特許を取得するのがよいか、
<部分>それとも、システムの一部に使用する部品や装置について特許を取得するのがよいか、
ということを検討します。
全体の方が広そうなので、強い特許のような気がします。
ところが、特許の場合、必ずしも全体>部分というわけではないのです。
部分についてもとてつもない威力を発揮することがあります。
その一つの活用が、法律です。
ビジネスの流れをフローチャートで表したときに、絶対に通らなければならない点があります。
その一つが、法律に準拠した製品を作ること、です。
法律に準拠した製品でなければ販売できないというルールがあれば、すべてのメーカーは、法律に準拠した製品を作らなければなりません。
そして、法律に準拠する製品を作るために必然的に使用しなければならない装置や部品があれば、どんなに小さくても、すべてのメーカーが使わざるを得ないのです。
その点を特許で抑えていたとしたらどうでしょうか。
NHKのお話に置き換えて考えてみます。
・テレビがある場合はNHKの受信料を支払わなければならない。
・NHKは、「NHKだけ映らないテレビ」に関する特許を取得する。
・メーカーは、「NHKだけ映らないテレビ」の開発・販売が難しい。
・メーカーは、「NHKも映るテレビ」を作らざるを得ない。
・テレビを購入した方は、NHKの受信料を支払わざるを得ない。
このように、法律を使った特許の活用というものがあるので、全体という視点だけに捕らわれることなく、ビジネス上必ず通らなければならない通過点があるかどうかを検討することも大切です。