おはようございます。
弁理士の渡部です。
本日は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの特許の範囲についてお話します。
ちょっと長いのですが、面白い手法ですので分かりやすく背景から説明したいと思います。
特許の範囲を表現する手法として、プロダクト・バイ・プロセス・クレームというものがあります。
■プロダクト・バイ・プロセス・クレームって何?
特許には、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」の3つのカテゴリがあり、このうち「物の発明」については、原則として、物の構造を文章で表現してクレーム(特許の範囲)を記載します。
しかし、化学系の発明のように、必ずしも物の構造を文章で表現することが難しい発明もあり、従来より、物の製法により間接的に物の構造を特定する表現が用いられていました。
例えば、発泡シリコーンゴムがどういう構造かはハッキリと分からないけど、ある製法により作られたことはハッキリしている場合は、「発泡シリコーンゴムは、液状シリコーンゴム混和物を発泡及び硬化させて形成したものである」といういうふうに、物の製法により間接的に物の構造を特定することが認められてきました。
■プロダクト・バイ・プロセス・クレームの特許の範囲は?
このように表現した場合、特許の範囲をどのように考えたらよいでしょうか。
普通の感覚では、液状シリコーンゴム混和物を発泡及び硬化させて形成した発泡シリコーンゴムを用いた場合は、特許の範囲に入り、それ以外の製法で作られた発泡シリコーンゴムを用いた場合は、特許の範囲に入らないと考えるのが自然かもしれません。
しかし、最高裁判例では、液状シリコーンゴム混和物を発泡及び硬化させて形成した発泡シリコーンゴムと同じ構造・特性の発泡シリコーンゴムを用いた場合は、すべて特許の範囲に入るという考えが示されています。
すなわち、「液状シリコーンゴム混和物を発泡及び硬化させて形成する」という製法以外の製法で作った発泡シリコーンゴムであっても、「液状シリコーンゴム混和物を発泡及び硬化させて形成する」という製法で作った発泡シリコーンゴムと同じ構造・特性であるならば特許の範囲に入るという考え方です。
■このような考え方に問題はないの?
でもこのような考え方は、大きな問題を抱えています。
企業は、特許公報の内容を見ても、どういった発泡シリコーンゴムを用いたら特許侵害になり、どういった発泡シリコーンゴムを用いたら特許侵害にならないのかよく分からないという問題です。
もっと具体的にいうと、特許公報には製法が記載されているが、この製法は、発泡シリコーンゴムのどのような構造・特性を特定しているのかが不明であるので、企業は、特許侵害とならない発泡シリコーンゴムとして一体何を用いたらよいかが分からないのです。
次回は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの特許の有効性についてお話します。
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