おはようございます。
弁理士の渡部です。
商標は、登録を受けても、その後3年以上使用していない状態が続くと、請求により登録が取り消されてしまうという制度になっています。
取消が請求された場合、商標権者が直近の3年間のうち一度でも使用していることを証拠によって立証しなければならないのですが、商標権者が取消を免れようとするために偽造証拠を提出することもあります。
私も、偽造の疑いがある事件を担当したことがあります。
まず直感的に偽造の疑いを抱いたのですが、なかなか明らかな不備や矛盾が見つからず困っていました。
そこで、疑いを抱いた写真について、どのような目的でこの写真を撮影したのかを相手方に尋ねてみたところ、「写っている商品Aの原材料Bが値上がりしたため、商品Aの価格改定を行い、従業員に周知するために写真を撮影した。」との回答がありました。
これを受け、我が国における原材料Bの価格推移が某行政庁で集計されていることを思い出し、某行政庁から資料を取り寄せ、証言と一致しているかどうかを確認してみたところ、写真の撮影日においては原材料Bの価格に大きな変化はないことが分かりました。
この点を指摘したところ、特許庁で写真の信憑性が否定されました。
他の事件でも、納品書に記載された電話番号が異なる点を指摘し、納品書の信憑性が否定された例があります。
偽造を見破るのはとても難しいことですが、偽造をすれば必ずどこかに綻びが生じるので、証拠をつぶさに観察し、そこを見逃さないことが代理人の使命の一つだと思います。