おはようございます。
弁理士の渡部です。
本日は、先のブログ「日本における、他人の氏名を含む商標の取り扱い」の続きです。
イバンカ氏のブランド名のように他人の氏名を含む商標について中国と日本では取り扱いが異なることを説明しましたが、自分の氏名が商標登録から簡単には保護されない原因が、実は別のところにあります。
それは、皆さんも一度は耳にしたことがある「先願主義」という、商標制度の骨格をなす考えにあります。
中国の商標制度も日本の商標制度も、先願主義を採用しています。
まだ誰にも商標登録が取得されていない商標については最初に商標出願をした企業に対し商標登録を与えるという考え方で、いわゆる早い者勝ちのルールを原則としています。
こういうと、単に「ああ、早い者勝ちなのね」という程度の印象しか残らないと思うのですが、先願主義を採用する国においては、先に出願したことを「先願権」という一種の権利のように位置づけて強く保証しています。
すなわち、後から出願した企業に対し商標登録を認めることは、他人の先願権を害することになるので、よほどの理由がないと認めないという立場を取っています。
他人の氏名を含む商標であっても、他人の氏名権を害する不利益が、他人の先願権を害する不利益よりも大きいかどうかを天秤にかけられるということです。
分かりやすくモデル化すると、
氏名権 > 先願権 なら、他人の氏名を優先し、
氏名権 < 先願権 なら、他社の商標登録を優先するという判断が審査の場面で常に行われます。
重さを量ることはできませんが、先願主義を採用している日本や中国においては、この先願権というのが相当なウエイトを持っているということです。
次回は、「私たちが他社に商標登録を取得されないためにできることは?」についてお話しします。
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