おはようございます。
弁理士の渡部です。
商標「鯖威張る」が出願されましたが、他人の登録商標「サバイバル」があり、審査では、この引用商標と類似するとして出願商標を拒絶しました。
商標の類似は、商標から生じる「外観」(見た目)、「称呼」(読み方)、「観念」(意味)の観点で判断します。
この3つの要素のうち1つでも同じものがあれば、「類似」と判断されるのが通常の運用です。
審査での判断は、とても基本に忠実です。
出願商標「鯖威張る」からは「サバイバル」の称呼が生じ、引用商用「サバイバル」からは同様に「サバイバル」の称呼が生じるので、両商標は、称呼が同じであるから類似であるという結論でした。
出願人は、これを不服として審判を請求しました。
審判では、次のように判断されました。
■「外観」(見た目)■
両方の商標の外観は、十分に区別できるものである。
■「観念」(意味)■
出願商標からは「鯖が威勢を張ってえらそうにしている」という観念を生じるのに対し、引用商標からは「生き残ること、生き延びること」という観念を生じるので、観念において相違すること明らかである。
■「称呼」(読み方)■※ここがポイント!※
両方の商標は、いずれも「サバイバル」の称呼を生ずるものではあるが、出願商標は、「サバ」と「イバル」の2音節に区切って称呼されるのに対し、引用商標は、「サバイバル」と一気一連に称呼されるので、その音感、音調において相違し、互いに区別して聴取される。
結論として、3つの要素のいずれも同じではないので、非類似であると判断したのです。
さて、なぜ類似する商標の登録が認められないのでしょうか。
それは、例えば2つの商標A,Bを同じ商品Xに使用した場合、商標Aを付した商品Xを買った消費者が、後日、商標Aを付した商品Xを買おうと思い、間違って商標Bを付した商品Xを買ってしまうおそれがあるからです。
このような観点から、本件を見てみましょう。
貴方だったら、商標「サバイバル」を付した商品Xを買おうと思い、間違って商標「鯖威張る」を付した商品Xを買ってしまいますか?
審決の判断は、消費者の観点に立った結論だったのではないでしょうか。
参考:不服2011-19223