おはようございます。
弁理士の渡部です。
商標の制度に「異議申立て」という手続きがあります。
登録を受けた商標に対して、その商標は登録されるべきでない旨の異議を第三者が申し立てる手続きです。
例えば、登録された他人の商標が、自社の登録商標と類似しているような場合です。
類似の商標が登録されると、消費者が自社商品と間違って他社商品を買ってしまうという状況が生じるおそれがあるので、自社ブランドを守る観点から見過ごせません。
そこで、そのような疑いがある場合に、特許庁に審査の見直しを求める手続きが「異議申立て」です。
異議申立ては、とても簡単な手続きで行うことができ、費用も安いです。
そして、大きなメリットとして、審査の見直しは、商標の審査を行った審査官の上級職である審判官が行います。
しかも1人ではなく3?5人の審判官が優れた知識と豊富な経験に基づいて行うので、より妥当性のある結論が得られます。
さて、異議申立ては、このように第三者にとって大変使いやすくメリットのある制度ですが、翻すと、登録を受けた権利者にとっては脅威ともなる制度です。
権利者にとっては、時間と費用をかけてようやく手に入れた権利です。
権利侵害の疑いがあればすぐにでも権利を行使したいところです。
しかし、権利行使のカウンターとして異議申立てをされると、登録が取り消されるかもしれないリスクにさらされます。
どのように進めればリスクを最小限にし、かつ、ブランドを守ることができるのか。
1手間違えれば億単位のお金が動くこともあります。
責任重大ですが、弁理士の腕の見せどころです。
また、弁理士にしかできないことなので、権利者を守る立場に立たされたときは、クライアント以上にクライアントの事業を考え、最善の手を提案することが重要だと考えます。