おはようございます。
弁理士の渡部です。
昨日、弁理士試験論文試験の合格発表がありました。
弁理士試験は、短答試験、論文試験、口述試験の3つからなり、今回発表があったのは、2番目の論文試験の合格発表です。
ですので、論文試験に合格された方は、10月に行われる最後関門である口述試験に臨むことになります。
弁理士試験の合格発表は、花形の司法試験と違ってニュースなどで大々的に報道されるわけではなく、特許庁のホームページに小さく掲示されるだけなので、わざわざ見に行かないと知ることができません。
私が受けたときはもう何年も前になるのですが、この時期になると、合格発表が気になってしまいます。
母校の大学の合格発表などは全然気にもしないのに、弁理士試験だけは、何年経っても毎年気になります。
私の人生にとってそれだけ大きな出来事だったということだと思います。
さて、今年の論文試験の合格者は、248名です。
248名というと、どれぐらいの規模なのでしょうか。
今年の受験者数5300名に対し、248名の合格者です。
私のときは、受験者数10000名に対し、589名ですから、合格率という指標でみると、私のときの5.9%に対し、今年は、4.7%とさらに狭き門になっています。
合格された方も、そうでなかった方も、弁理士試験という一つの関門に対し、ぜひ一生懸命に取り組んでいただきたいと思います。
合格された後の実務と比べると、弁理士試験は、決して難しい内容を求められているわけではありません。
「原理原則を知っていますか?」ということを問われているだけです。
これは、その後の実務において大切な知識になります。
複雑な事件を取り扱うときに一番の道しるべになるのが、この原理原則です。
すべての事件は、原理原則に沿って、現実に起こっている問題を法律に当てはめ処理していくことになります。
私もいま訴状を起案しています。
規範を定立し、事実を当てはめ、結論を出す。
弁理士試験の論文試験でやっていたことと同じことを正にやっています。
弁理士試験の場合、結果が伴わなければ不合格になるわけですが、これは、自分だけが背負う責任です。
これに対し、実際の事件の場合は、自分だけはすみません。
自分が導く結果について、お客様の事業の成否がかかっているからです。
本当に大変な仕事だと思います。
実際の事件は、弁理士試験と違い、正解が用意されている問題に対して答えを出すというものではなく、お客様のリアルな事業において生じている問題に対し、知的財産に関し何が問題なのかを発見し、複数の解決策のなかから最も効果的な解決策を提示し、答えを出していくものです。
その上、お客様の事業の責任とともにあるというのですから、その重責は図り知れません。
誰もが合格後のバラ色の人生を夢見て難関な試験に挑みますが、合格後に待っているのは、諸手を挙げて受け入れてくれる社会ではなく、他の業種と同じように競争原理が働く市場です。
ですが、私は、弁理士という資格を得て、この仕事に就けたことを幸せに思います。
重責がある大変さは確かにあります。
しかし、責任を受け入れる覚悟があれば、その反面、事件を解決するためのプロセスは、自ら設計し選択し実行することができるからです。
これほどまでに、自分の裁量で進めることができる仕事が、他にどれほどあるでしょうか。
「やり甲斐」という言葉が適切な表現かどうかは分かりません。
これが人生を捧げる仕事において、どれだけの価値があるのかも評価しにくいかもしれません。
しかし、私にとってこの弁理士の仕事は、人生を捧げる大きな価値があると感じています。
弁理士試験の試験勉強も大変です。
何年経っても体に染み付いて忘れることができません。
ですが、ぜひ合格後の仕事のあり方の一つとしてこの話を参考にしていただき、試験突破に向けて頑張っていただきたいとエールを送ります。
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