おはようございます。
弁理士の渡部です。
受験生への応援ブログになっているのでしょうか。
弁理士試験の記事は比較的人気のあるテーマになっています。
先週、弁理士試験短答試験の合格発表がありました。
ここ最近の発表には驚かされることばかりです。
私の受験時代とは状況が一変しているからです。
今回驚いたのは、合格者数が少ないことです。
私の受験時代は、受験者数が約10,000名であったのに対し、今年の受験者数は、その5割超減の4,600名ですから、短答試験の合格者も、大体5割減くらいと思っていました。
ところが、結果を見てみると、合格者は僅か557名。
えっ、1次試験なのに、私の受験時代の最終(3次試験)合格者数よりも少ないのです。
5割減どころではありません。
私の受験時代は短答試験の合格者数が2,800名ですから、577名というと、約8割減の計算になります。
その要因の一つは、短答試験の免除制度が導入されたことがあります。
短答試験に一旦合格すると、その後2年間、短答試験が免除となります。
そのため、2次試験である論文試験は、短答試験の今年の合格者のほか、短答試験の免除者が受験することになります。
短答試験合格という出口は、2割減になったのですが、論文試験受験という入り口は、免除者を加えると私の受験時代とほぼ同じくらいの割合になります。
免除制度が導入され、勉強が集中的に行えるようになったメリットはあります。
しかし一方で、1次試験の合格の門戸が狭くなるとともに集中的に勉強して挑む受験生が増えることから受験生の水準が高くなるので、参入が大変になったというデメリットもあります。
弁理士試験に限らず国家資格の試験制度は、その時代のニーズ等に合った最適な人材を輩出するように設計されるものですから、求められる点においてバランスをとれる受験生が合格していくのだと思います。
そんななか、今年の短答試験で導入されたのが「個別足切り制度」です。
短答試験は合格基準点というものが設定されています。
合計の得点がそれ以上であれば合格、それを下回れば不合格という採点基準になっており、「全体の足切り制度」は以前からありました。
今回導入される「個別足切り制度」は、各教科ごとに合格基準点が設定され、各教科の得点が各教科の合格基準点を下回れれば、合計の得点がどんなに高くても不合格という採点基準です。
何の意味があるのだろうか、と考えてみました。
というのも、私自身、特定の教科を捨て、他の教科の合計で高い点数を取るという戦略で挑んだ経験がないからです。
しかし、聞いた話では、例えば、条約や著作権などは範囲が広い割に配点が少ないので、これらを捨ててしまうということがよくあるそうです。
極端な話、条約や著作権が0点でも、特許、意匠、商標などで高い点数を取り、合計の得点が合格基準点を超えるように勉強するやり方も、ありだったわけです。
なぜそれができるのかというと、条約や著作権は、2次試験、3次試験で出題されず、1次試験きりの教科なので、捨てても後で足を引っ張らないからです。
こうした試験制度は、私の受験時代でも同じでした。
でも、私は、特定の教科を捨てるという戦略を取りませんでした。
それは、弁理士試験で問われることはすべて、弁理士試験に合格した後にお客様を支援するために必要で大切な知識だと思っていたからです。
もちろん、限られてた時間のなかで、各教科にリソースを配分しながら勉強しなければいけません。
ビジネスでは、自分が苦手なところに敢えてリソースを割かず、自分が得意なところが際立つようにリソースを分配するやり方もあります。
しかし、弁理士試験は、苦手なところがあってはいけません。
すべての教科がバランスよくできることが求められているので、ミスをしない戦略を取ることが重要です。
合格して初めて実感として分かったのですが、それは、弁理士試験で問われることはすべて、弁理士試験に合格した後にお客様を支援するために必要で大切な知識だからです。
このとき初めて、受験時代に目的意識をもってしっかりと取り組んでいたこととが、本当の意味で実を結んだと感じました。
今でも私はお客様との打ち合わせには条文集を片手に持っています。
何年も前に徹底的に詰め込んだ条文の知識が頭のなかで体系化されているので、条文集の助けを借りれば、大抵の問題はその場で解決できます。
受験の最中は本当に大変で、合格のことしか頭にないかもしれません。
ですが、受験をしている「今」が合格後の「未来」につながっているので、今を大切に過ごすことが、弁理士として意義ある未来を切り拓くことにつながるはずです。
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