おはようございます。
弁理士の渡部です。
ご紹介する事件は、「カシェグラン」という商標が登録を受けましたが、これに対し、「カシェ」という商標を登録せずに使用し続けていた大阪の美容室が、自分の商標「カシェ」が長年の使用により既に広く知られていることを理由に、「カシェグラン」は登録されるべきではないとして登録の取消を求めた事件です。
我が国の商標法は、たとえ複数の事業者が似たような商標を使用していても、最初に出願した者に登録を認めるという制度を採用しています。
しかし、一部に「例外」が設けられています。
それは、登録を受けていない他人の商標であっても、広く知られている他人の商標と似ている場合は、登録を受けられないというものです。
登録を受けていない商標でも、長年の使用により蓄積されたブランドを保護するためです。
ただし、あくまで「例外」であるので運用は大変厳しく、本件について、特許庁は、11年以上も使用していた事実や雑誌や広告に何度も掲載されている事実があったものの、その程度の事実では広く知られているとは認められないとして、「カシェグラン」の登録を取り消すことはできないと判断しました。
こうなると一大事です。
登録せずに使用していた商標「カシェ」は、登録を受けた商標「カシェグラン」と似ていることを前提として訴えたものですから、「カシェ」を使い続けることは逆に「カシェグラン」び商標権を侵害する可能性が出てくることになり、場合によっては使用を中止せざるを得なくなるからです。