おはようございます。
弁理士の渡部です。
まず、各紙に「従業員の特許権」とありますが、これは、「特許を受ける権利」のことだと思います。
「特許を受ける権利」と「特許権」は別物であり、現在の制度では、従業員が発明をすると、特許を受ける権利が発生しこれが従業員に帰属するルールになっています。
そして、従業員が有する特許を受ける権利を企業に譲渡し、企業は、譲渡を受けた特許を受ける権利に基づいて企業名義で特許出願をし、特許権を取得します。
従業員は、特許を受ける権利を企業に譲渡した対価(お金)を受け取ることで、従業員と企業のバランスをとっています。
今回の政府方針では、従業員が発明をすると、特許を受ける権利が発生しますがこれが従業員ではなく企業に帰属するというルールに変更しようというものです。
企業に帰属することになれば、もともと従業員の権利ではないということになるので、企業は、従業員に対価(お金)を支払う必要がなくなるという制度になります。
この背景には、従業員の退職後に巨額の訴訟が提起され、企業の負担がとても大きく、経済界から特許を受ける権利を企業側に帰属させるべきだとの声が上がっているためです。
ちなみに、有名な青色発光ダイオード事件では、約8億4000万円で和解が成立しています。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130607-OYT1T01112.htm