おはようございます。
弁理士の渡部です。
先日提出した「情報提供」の結果が特許庁より帰ってきました。
結果は、…
「拒絶理由通知に利用しました。」
でした。
特許、意匠、商標では、「情報提供」という制度があります。
これはどういうときに利用するかといいますと、例えば商標の場合では、自社の登録商標と類似する商標が他社から出願されることがあります。
このような出願を放置しておきますと、稀にですが、誤って登録となってしまうことがあります。
類似する商標が誤って登録されてしまった場合、どうなるのでしょうか。
もちろん、誤って登録されたものですので、異議申立てをすれば登録を取り消すことができますし、無効審判を請求すれば登録を無効にすることができます。
でも、この手続をするには費用も時間もかかります。
では、この手続をしなかった場合は、どうなるのでしょうか。
自社の登録商標も他社の登録商標も、併存することになります。
併存ということは、自社の登録商標と類似する商標を他社が使用できることを意味しますので、その範囲で使用されると、自社のブランドが害され損害が発生するおそれがあります。
そして、登録から5年経過すると、他社の登録商標に既得権が発生し、もはや取消や無効にする手段がなくなってしまいます。
こうした事態を登録前に阻止するのが「情報提供」です。
特許庁の審査官は、限られた時間のなかで拒絶理由となるすべての事実を漏れなく調査ことはできません。
これに対し、自社は、対象の出願が自社の登録商標と類似する商標ですから、審査官が知り得ない取引上の事実を知っていることが多いのです。
そこで、そうした情報を資料としてまとめ審査官に提出することで、審査の資料の一部として活用してもらいます。
審査官が、提供された情報をみて、他社の出願について拒絶をすべきであるという心証を抱いたならば、拒絶理由通知がなされますので、審査官の手を借りて他社の出願の登録を阻止することができる、というわけです。
今回の結果は、審査官が他社の出願について拒絶をすべきであるという心証を抱いた、というものです。
「情報提供」は、異議申立てや無効審判に比べ、費用も安く手続も簡単、リスクも少ないのでお勧めです。
商標については、問題を先延ばしにすると殆どの場合多くの費用や時間を費やし、ハイリスクを負うことになるので、問題を発見したらすぐに行動に移すのが一番です。
商標戦略の秘訣の一つは、正に「思い立ったが吉日」です。