おはようございます。
弁理士の渡部です。
今年の1月1日から、商標の審査は、新しい審査基準に基づいて行われることになりました。
とは言っても、特許庁の内部のことなので、外側にいる私には、目に見えて何かが変わったというわけではなく、いつもと同じように時間が流れています。
さて、旧基準と新基準を比べて、旧基準の方が有利な点については、その一部を過去の記事でご紹介しましたが、今日は、新基準の有利な点を少しご紹介します。
新基準では、「健康食品」の取り扱いが変わりました。
旧基準では、「健康食品」を指定商品とする場合、「○○を主原料とする△△状の加工食品」というように、主原料と状態を特定することが求められていました。
例えば、次のような例です。
「クロレラを主原料とする粒状の加工食品」
「DHAを含有する精製魚油を主原料とするカプセル状の加工食品」
「ロイヤルゼリーを主原料とする顆粒状の加工食品」
「アガリクス茸のエキスを主原料とするペースト状の加工食品」
ぱっと見て何を指しているか分かりますでしょうか。
とても分かりにくい表現だと私でも思います。
私のクライアントが過去に自己出願をしたことがあります。
商品は、既製品ではなく世の中にはないまったく新しい商品でした。
それは、例えば「牛乳」に「生薬」を配合したような商品でした。
(実際の商品の原料は別のものです。)
健康によいので、クライアントは、自社商品が「健康食品」であることを特許庁に伝えたところ、指定商品は「牛乳及び生薬を主原料とする液状の加工食品」がよいとアドバイスを受け、そのとおりに出願したそうです。
それから数年ほどして、私が同商品について使用する別の商標を出願することをそのクライアントから依頼されました。
私は、その商品を初めて手に取ったとき、確かに健康によいのかもしれないが、流通経路、販売形態、商品説明等を考慮すると、この商品は、「健康食品」ではなく「牛乳」ではないかと考えました。
そこで、調査・検討の上、その出願においては、「牛乳」も指定商品として含めることにしました。
そうしたところ、審査の過程で、指定商品を使用していることの証明をするように特許庁から要求されまして、カタログ等を提出して商品説明を行ったところ、「牛乳」についての使用は認められたものの、「健康食品」についての使用は認められませんでした。
つまり、特許庁の審査官の見解では、クライアントの商品は、「健康食品」ではなく「牛乳」である、というものでした。
こうしたことが起こったのも、旧基準のように「健康食品」の表現の分かりづらさが一つの原因でもあったと考えます。
さて、新基準においてこの「健康食品」の取り扱いですが、どのように変わったかといいますと、「サプリメント」というシンプルな表現で認められるようになります。
主原料も状態も特定する必要がなくなり、区分も1つになるので、ユーザフレンドリーな改訂です。