おはようございます。
弁理士の渡部です。
東京五輪エンブレムの問題については、その後、デザイナーの創作のプロセスに関し様々な問題が指摘されているようです。
引用:http://www.nikkei.com/
商標に関して言えば、先のブログ「東京五輪エンブレムは似ているか」のとおり、東京五輪エンブレムが、ベルギーリエージュ劇場のロゴと似ているとするのは難しいといえます。
したがって、IOCが、世界的に商標調査を実施しているとコメントしたことからも、少なくとも日本において、東京五輪エンブレムについて商標登録を取得する可能性は高く、商標登録を取得すれば、東京五輪エンブレムを堂々と使用する権利が得られるわけです。
しかし、商標登録に基づいて使用できる権利は、著作権との関係で問題があれば制限されるというルールが商標法上設けられています(29条)。
すなわち、もし、東京五輪エンブレムがベルギーリエージュ劇場のロゴの著作権を侵害するものであれば、商標登録を受けても使用することはできない、ということになります。
著作権を侵害するかどうかについては、様々な条件がありますが、東京五輪エンブレムについては、そのなかでも特に次の2つの条件が重要視されるでしょう。
一つは、東京五輪エンブレムのデザイナーが、東京五輪エンブレムを制作するにあたり、ベルギーリエージュ劇場のロゴを参考にしたかどうかです。
参考にしたかどうかは、デザイナーの内心の問題ですが、本人が参考にしていないと言えば参考にしていないと判断されるわけではなく、客観的に判断されることになります。
例えば、デザイナーのPCの閲覧履歴にベルギーリエージュ劇場のページが含まれている場合は、参考にした可能性があるとの判断に傾くでしょう。
もう一つは、「表現の選択の幅」があるかどうかという問題です。
表現の選択の幅が広いか狭いかという問題ですが、選択の幅が狭い(つまり誰がやっても同じになってしまう)ものは保護しないという考え方です。
ベルギーリエージュ劇場のロゴは、2つの三角形と縦長長方形で「T」の文字を表現しているところ、三角形と縦長長方形で「T」の文字を表現しようとすれば大体皆このようなロゴになってしまうと認められる場合、そのようなロゴには著作権法上保護を与えるべきではないという考えです。
表現の選択の幅が狭いものに独占権という保護を与えてしまうと、他の誰も、「T」をモチーフにしたロゴを作ることができなくなってしまい、弊害の方が大きいからです。
今後は、この2つの条件に該当するかどうかが問題となってくるでしょう。