おはようございます。
弁理士の渡部です。
クライアントからニュースリリースがありましたので、私からもご紹介させていただきます。
先日、中小企業やベンチャーの皆様の見本となる特許に関わることができました。
「棒1本が特許に。」(特許第4896258号)
どういうことかといいますと、特許の構成要件が、棒1本だけなのです。
本件特許を取得したクライアントの製品は、自転車の駐輪装置であり、自転車のクランクを1本のストッパー(棒)で駐輪するという製品です。
ストッパー1本で自転車を駐輪するという発想は、まさに「コロンブスの卵」です。
本件製品をみても、なぜ自転車が固定されるのか、まるで魔法にかけられたようです。
特許は、構成要件が少なければ少ないほど、広い特許ということができます。
その反作用として、従来技術に抵触する可能性もまた高くなるのですが。
本件特許も、審査の過程において、4件の従来例を引用されて拒絶理由通知を受けました。
拒絶理由通知を受け、一生懸命に検討しました。
本件特許の特徴は、従来例との比較においても正に棒1本で自転車を固定することにあったので、構成要件を増やすべきではないと判断したからです。
本件製品をみると、従来例との違いは明らかです。
とすると、特許への糸口は、本件特許の本質をどう見抜いて文章として表現するかにかかっていると考えました。
そこで、審査官に本件製品をみてもらうことにしました。
本件製品を審査官にみせ、実際に自転車を駐輪してもらうことで、従来例とは明らかに違う点を理解していただくことが重要だと考えたからです。
この点でコンセンサスが得られたので、後は、弁理士の腕の見せ所です。
審査官と協議しながらクレームの内容を詰め、めでたく特許を取得することができました。
本件特許が取得できたのは、製品の独自性もさることながら、ひとえにクライアントの情熱だと思います。
私の提案を信じ最後まで諦めない姿勢が、特許を獲得できたのでしょう。
本件特許がどれだけすごいか。
特許の構成要件は、棒1本ですので、その棒を含む製品はすべて特許の権利範囲となります。
実は、棒である必要もないのです。
クレームには、「自転車固定手段」と表現されていますので、自転車を固定するものであれば、ロープやワイヤーで実現される製品も特許の権利範囲になります。
私が経験した数多くの事件でも、これほど広い特許はなかなかお目にかかることができません。