おはようございます。
弁理士の渡部です。
漢字一文字からなる商標というのを時折みかけます。
漢字一文字からなる商標というのが意外にやっかいです。
漢字によっては、多様な読みが生じるものがあるからです。
例えば、「寛」という漢字は、漢和辞典を紐解くと、音読みで「カン」、訓読みで「ひろい」「ひろし」「ゆるやか」「ゆるやかなり」「ゆるす」「ゆるくする」「ゆるくす」、名付けの読みとして「お」「おき」「ちか」「とお」「とみ」「とも」「とら」「のぶ」「のり」「ひと」「ひろ」「ひろし」「むね」「もと」「ゆたか」「よし」というたくさんの読み方があります。
商標が似ているかどうかの判断基準として、商標の読み方が同じかどうかという基準があります。
もし商標「寛」を見た消費者が上記すべての読み方をするのであれば、これと同じ読み方の商標は、似た商標ということになり、登録を受けることができません。
私が担当した事件は、漢字一文字からなる商標が引例として挙げられ、辞書に記載されている読みの一つと同じだという理由で拒絶理由通知を受けました。
これに対し、「そういう読み方はしない」とただ反論しても水掛け論で、水掛け論を展開した場合は、特許庁の判断が優先されます。
つまり、登録にはできないという結論です。
ですので、なぜそういう読み方をしないのかという証拠を添える必要があります。
証拠を見つけ出して提示し反論したところ、私が担当した事件では、引用商標はそういう読み方をしないと特許庁でも判断され、登録となりました。
まさに専門性が発揮される領域の仕事であったと感じます。