おはようございます。
弁理士の渡部です。
ピコ太郎PPAPの商標事件について商標がビジネスになるということで話題となりましたが、果たして商標登録がお金になるのでしょうか。
本日は、商標登録や特許などの知的財産でお金を借りるというテーマでお話しします。
ピコ太郎PPAPの商標事件に関する過去の記事はこちらです。
知財金融ってなに?
さて、知財金融(ちざいきんゆう)という言葉を聞いたことがありますか。
知的財産を金融資産として取引に利用することで、例えば、特許権や商標権を保有していることを理由に銀行から融資を受けるというような場面で使われます。
銀行からの融資というと、借りたお金が返せなかったときは担保を売却し、これを返済に充てることが行われるため、担保価値があるものとして特許権や商標権を位置づけようというイメージがあると思います。
このような場合は、特許権や商標権そのものに価値があり、且つ、金額がある程度確定していなければ、融資を実行することができません。
価値がなかったり、金額がその時その時で変わったりしては、担保としての機能を果たさないからです。
担保としての価値からビジネスとしての価値にシフト
ところが、企業に対する融資について最近の事情は、金融庁の指導もあって「担保」という考え方が薄まっています。
では、どこを評価するのかというと、事業(ビジネス)を評価するようになっています。
企業に融資する場合、その企業が行っているビジネスが継続的に収益を生むかどうか、又は、その企業が行っているビジネスが成長するかどうかという点を重視して評価します。
すなわち、ビジネスが継続的に収益を生むのであれば、お金が返せなくなるリスクは少ないと判断するわけです。
このような考え方にシフトした場合、知的財産をどう評価するかというと、特許権や商標権そのものの価値がいくらであるかを評価するということはしません。
特許権や商標権は、ビジネスを保護するものであるので、ビジネスとの関係性が密接です。密接ということは、ビジネスの内容によって価値があったりなかったり、価値があってもビジネスの状況によって価値が変わったりするので、特許権や商標権はもとより固定的な価値として算定することに馴染まないのです。
そう考えると、融資する上で担保として知的財産を位置づけると、大変取り扱いが難しいのですが、上記のように、ビジネスを評価するという考え方にシフトした場合は、評価が一転変わってきます。
特許権や商標権がビジネスにおいてどのように手当てされているかという点に照準を絞り、例えば、ブランド名を商標登録で保護しているのであれば、「ブランド名が使えなくなるというリスクが小さい」「だからビジネスが継続的に利益を生む又は成長すると判断する方向に評価しよう」ということになります。
特許であれば、この製品が売れていて特許権で保護されているのであれば、「競合他社が同様の製品を販売し市場のシェアが脅かされるリスクが小さい」「だからビジネスが継続的に利益を生む又は成長すると判断する方向に評価しよう」ということになります。
大切なのは収益を生むビジネス
このような手法は、知的財産を大変評価しやすくしました。
評価しやすくなるということは、知的財産を金融資産として活用しやすくなるということです。
押さえておきたいポイントは、特許権や商標権そのものの価値があるかどうかを評価するのではなく、ビジネスにおいて特許権や商標権がどのように手当てされているかという点です。
もう少しかみ砕くと、特許権や商標権は単に保有しているだけでは価値があると評価されにくいこと、まず収益を生むビジネスが前提としてあって、特許権や商標権がそのビジネスを保護していることです。
特許庁が作成する知財ビジネス評価書も、このような視点で作成されています。
http://chizai-kinyu.go.jp/docs/
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