おはようございます。
弁理士の渡部です。
「秘密特許」は、軍事上又は国の政策上必要な場合には特許権に制限を加え、技術内容を公にしないというものです。
秘密特許制度は、明治32年に導入されましたが、戦後間もない1948年に廃止されています。
このように日本においては長らく秘密特許制度が存在しなかったのですが、昨今、秘密特許制度が再検討されているようです。
2007年11月26日付け日本経済新聞によると、経済産業省が、軍事転用可能な技術の流出を防止することを目的として、「秘密特許制度」を導入する方向で検討に入ったとのことが伝えられています。
これはまだ検討段階であり、現時点において実現されていません。
ところが一方で、日本では、隠れた秘密特許制度が一部に存在するという話があります。
特許法のどこにも規定されていないのに、何故そのような制度が存在するのかといいますと、根拠は、「防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」です。
本協定は、1956年に日本とアメリカ合衆国との間で締結された軍事関連特許の秘密保持に関する条約です。
本協定第3条では、「一方の政府が合意される手続に従つて防衛目的のため他方の政府に提供した技術上の知識が、提供国で秘密に保持されている特許出願の対象たる発明をあらわすものであるときは、その特許出願に相当する他方の国でされた特許出願は、類似の取扱を受けるものとする。」と定められています。
現在、我が国では、表立って秘密特許制度は存在しませんが、米国において秘密とされた特許出願に対応する日本での特許出願は、本協定に基づき、秘密特許の取り扱いを受けることになるようです。