おはようございます。
弁理士の渡部です。
種苗法という法律があります。
馴染みがないかもしれませんが、知的財産の一つである植物の新品種を保護する法律です。
「とちおとめ」「女峰」「紅ほっぺ」と聞くと、もしかしたらピンとくるかもしれません。
いずれも品種登録を受けている品種です。
品種登録制度を簡単に説明します。
新しい品種を育成するには、多くの知識、経験、試行錯誤が必要で、費用も時間も相当かかります。
このように苦労して育成した品種を市場で販売し、おいしい等の評価を受けると、第三者に真似をされることがあります。
真似は、新しい品種を育成するよりも、費用も時間もかけず簡単に行うことができるので、誰かが新しい品種を育成してくれるのを待って真似した方が楽であると考える人がいます。
このような状況を放置しておくと、次第に誰も新しい品種を育成しようとは思わなくなり、農林水産業の衰退につながってしますのです。
そこで、我が国では、品種登録制度というものを作り、新しい品種を育成した者(地方自治体、企業、個人)を保護しようというのです。
それが種苗法です。
品種登録制度は、新しい品種を育成した者に対し育成者権という独占権を付与し、その品種を一定期間(25年間)保護するものです。
育成者権を取得すると何ができるのでしょうか。
簡単に説明しますと、以下の3つの行為を独占することができます。
・登録品種の種苗(種や苗)を生産、販売する行為
・登録品種の種苗を用いることにより得られる収穫物を生産、販売する行為
・登録品種の加工品を生産、販売する行為
独占というわけですから、第三者が上記行為をすることも当然禁止されます。
例えば「とちおとめ」を無断で生産、販売すると、「とちおとめ」の育成者権を所有している方から差止請求や損害賠償請求を受け、刑事罰の対象にもなります。