おはようございます。
弁理士の渡部です。
本日は、先のブログ「著作権譲渡契約『未知の支分権』」の続きです。
著作者人格権は、著作者自身にのみ帰属するものであるため、契約によっても譲渡することができません。
著作者人格権も複数の権利が束になってでき上がっています。
著作者人格権には、(1)著作物を初めて発表できる「公表権」、(2)著作物に自分の名前を載せることができる「氏名表示権」、(3)著作物を改変されない「同一性保持権」という3つの権利が含まれています。
著作者人格権は、著作者の人格的利益の保護を目的とする権利なので、その行使を禁止する不行使特約を契約で定めても、それが有効なのかどうかが問題となります。
公表権、氏名表示権については、ほとんど問題となることはありません。
これに対し、同一性保持権については、一定の限界があります。
すなわち、著作者の人格を著しく害する程度まで改変を行った場合にまで不行使を認めることは、公序良俗に反し、契約が無効となる可能性があります。
したがって、改変の態様には注意が必要です。
なお、契約書において、「乙(受託者)は、第三者をして著作者人格権を行使させないことを保証する。」という規定を見かけることがありますが、この規定ぶりは適切でしょうか。
これは、第三者が行使することを阻止する義務があるという意味ではなく、第三者に行使させることをしないとも解釈できるので、疑義が生じ、争いの原因となります。
27、28条の権利を譲渡する場合は、同一性保持権の不行使特約がなくても改変することが前提となっているので、問題とはなりません。
しかし、この場合であっても、不行使特約を契約で明記することが無難でしょう。
次回は、「著作権譲渡契約『著作者人格権不行使特約2』」についてお話しします。
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