おはようございます。
弁理士の渡部です。
著作権法では、著作物を改変できるかどうかについての権利が定められています。
著作物を改変されない権利として、「同一性保持権」があります。
これに対し、著作物を改変できる権利として、「翻案権」があります。
これらの権利を同じ人が持っている場合は、特に問題はないのですが、著作物を改変されない権利である「同一性保持権」と、著作物を改変できる権利である「翻案権」を別々の人が持つことになると、問題が生じます。
どういった問題かというと、著作者であるAさんから「翻案権」を譲ってもらったBさんは、著作物を改変して使いたいと考えているところ、「同一性保持権」を持っているAさんは、その著作物を改変せずそのまま使ってほしいと考えている場合、どういった場合に改変ができて、どういった場合に改変ができないのかといった問題です。
これをきちんと線引きしないとトラブルの原因になってしまいます。
考え方としては、3つあります。
1つ目は、翻案権を持っていたとしても、翻案権の範囲で著作物を改変することは著作物の同一性を損なうことになるので、同一性保持権の侵害となるという考えです。
したがって、Bさんが翻案権を持っていても、翻案権の範囲で著作物を改変するには、Aさんの承諾が必要になり、Aさんの意に反してまで改変することはできないということになります。
2つ目は、翻案権を譲渡したのだから、同一性保持権はある程度制約を受けるという考えです。
すなわち、翻案権の範囲で行える改変のうち、著作者の人格的利益を害しないような改変であれば、同一性保持権を持っている人の承諾なしにできるというものです。
3つ目は、同一性保持権は当然に制約を受けるという考えです。
すなわち、翻案権を譲渡した以上、翻案権の範囲で著作物を改変することは、同一性保持権が制限される「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)として認められるというものです。
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