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薬と知的財産権

おはようございます。
弁理士の渡部です。


途上国においてエイズの治療が必要な患者の3分の2が必要な医薬品を入手できない状態にあり、特にアフリカとアジアの最貧国には、ほとんど抗エイズ薬を入手することができないといわれています。
その原因の一つは、医薬品の価格が高いということです。
医薬品の価格が高い理由の最も大きな理由は特許権にあります。


近年では、知的財産権と公衆衛生問題との均衡をとることに対し、「世界中の人々が、必要な薬を入手し、正当な治療を受けて生存する権利は、特許権に優先されるべき」であるとして議論が強くなってきています。


では、極論ですが、薬については特許をなくしてしまうというのはどうでしょうか。
製薬会社は、1つの医薬品を開発するのに260~360億円もの開発費がかかります。
製薬会社は、画期的な医薬品を開発し市場で売り出しますが、特許がないために、時を置かずして、同一成分の後発医薬品が3~6割程度の価格で販売されます。
先発医薬品の製薬会社は、市場で自社の医薬品が売れず、開発費を回収することなく、やがて潰れるでしょう。


次の製薬会社も、同様の運命を辿ります。
さらに次の製薬会社も、同様の運命を辿ります。
これを繰り返していくと次第に、製薬会社は、医薬品の開発を行わなくなります。
他社の新薬を模倣した方が競争優位に立てるからです。
製薬業界がこうなってしまうと、上記問題は途上国に止まらず、全世界にまで及ぶことになります。


先発医薬品を開発した製薬会社が開発費を回収できる仕組みが如何に重要かがお分かりいただけると思います。
その仕組みが、現在のところ知的財産権によって成り立っているのです。


薬については、TPPの話題でも知的財産権の厳格な運用に反対が呼びかけられていますが、知的財産権が悪いという認識は正しくなく、先発医薬品を開発した製薬会社が開発費を回収できる仕組みを維持しつつ、途上国への薬価の問題を解決する道を模索すべきであると考えます。





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