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製法が違っても特許侵害、最高裁が初の判断

おはようございます。
弁理士の渡部です。


特許を申請する場合、特許としてほしい権利の範囲を文章で記載します。
これをクレームといいます。


物の発明のクレームでは、通常、物の構造を記載しますが、例外的に、物の製造方法(製法)を記載することも認められています。


物の製法を記載したクレームについて他社の製品が特許の範囲に入るかどうかを判断する場合、
(1)製法は違っても、できあがった物が同じならば特許の範囲に入るという、特許の範囲を広くとらえる考えと、
(2)あくまで製法が同じでなければ特許の範囲に入らないという、特許の範囲を狭くとらえる考えが
ありました。


今回最高裁は、(1)の考えに基づく判断を初めて示しました(平成27年6月5日第二小法廷判決)。


本来、物の構造を記載するところ製法を記載することが例外的に認められているのは、物の構造を解析することが技術的に困難である場合に配慮しています。


例えば、お菓子メーカが、ある製法を採用したことで従来よりも10日も保存がきくようになったとします。
このお菓子について特許を申請する場合に、お菓子の構造(お菓子に含まれる何の物質が保存性を高めたのか)を解析することが技術的に困難な場合があります。


このとき、お菓子の構造を記載することしか認めないとすると、このお菓子メーカが特許を取得することは極めてハードルが高くなってしまいます。
そこで、このような場合には例外的に、お菓子の製法を記載してもいいよ、ということになっています。


すなわち、100点の記載でなければ特許を与えないというのではなく、80点の記載でも特許を与えましょう、という考え方です。


しかし、これには問題があります。


物の構造まで明らかにする努力・負担を負った企業と、物の製法を明らかにする程度の努力・負担で済んだ企業が、同じ強さの特許を取得するのは公平ではありません。


そこで、上記(2)の考え方は、80点の記載でも特許を与えるのはいいが、80点の強さの特許にするべきだ、というバランスを考慮した考え方です。


今回最高裁は、上記(1)の考え方に基づく判断を示しましたが、上記(2)の考え方を無視したものではありません。
「製法の記載が認められるのは、出願時において物を構造により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在する場合に限る」という限定が付されています。





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