おはようございます。
弁理士の渡部です。
先のブログでは、「製菓事業のビジネスモデル」についてお話ししました。
本日は、その続編で「製菓事業の商標登録戦略」についてのお話をご紹介します。
もし他社の商標登録との関係で、ロングセラーの商品の名前が使用できなくなった場合、商品の名前を変えてもブランドをそのまま引き継ぐことは可能なのでしょうか。
この点、クライアントにお話を聞いてみたところ、「消費者は、名前を変えると別の商品と認識してしまうので、以前のブランドを引き継ぐことは難しい。また、名前を変える以上、同じ内容の商品というわけにはいかないので、商品の内容に少し変更を加えることになるが、この変更もまた以前のブランドイメージを遠ざけてしまうので、この点でも以前のブランドを引き継ぐことは難しいといえる。名前を変えることは、まったく新しい商品を立ち上げるという意味になり、必ずしも以前の商品と同じ評判が得られるとは限らないので、特にロングセラーの商品について名前の変更は最も避けたい。」ということでした。
では、こうした事態を避けるため、製菓事業においてどのような商標登録戦略をとったらよいのでしょうか。
商標登録戦略の一つとして商標登録の取得タイミングという切り口で考えてみます。
我が国が先願主義を採用していることから、商品の販売前が一番よいというのが教科書の教えですが、製菓事業において商標登録を取得するタイミングは、いつがベストでしょうか。
しかし、製菓業界においては、次の3つの要因があり、一概には教科書どおりにはいかない事情があります。
一つ目は、定期的に新商品を市場に投入し、その多くの商品が短期間で終わってしまうので、販売前に商標登録を取得しても、その多くが使わなくなってしまうという点です。
二つ目は、ロングセラーの商品となったタイミングで商標登録を取得しようとすると、他社の商標登録の関係で取得できない場合があり、これは、ロングセラーの商品について将来的に名前を変更しなければならないリスクにつながるという点です。
三つ目は、商品の名前は、その商品を通じて消費者に伝えたいメッセージに沿って付けるものであるので、ある商品の名前を他の商品に転用することが難しく、その意味で、ある商品について取得した商標登録を他の商品に転用することもまた難しいという点です。
この点、クライアントとしては専門外の質問で答えにくいとは思ったのですが、この3つの要因を踏まえた切り口で聞いてみたところ、きちんとした方針をお持ちだったことに驚きました。
皆様もぜひ自社の事業の特性や問題を分析し、自社にとって最適な商標登録の戦略を考えてみてください。
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