おはようございます。
弁理士の渡部です。
インターネット上において、違法な動画の流通は、権利者団体にとって深刻な問題となっています。
最近でも、これに関連し、違法な動画であることを知ってその動画をダウンロードして保存する行為を刑事罰の対象とすることを盛り込んだ改正著作権法が成立したばかりです。
そこで、権利者団体は、違法な動画や音楽のファイルを自動的に検出し削除するロボット「Fluzo-S」を開発し、プロバイダーに対し、「Fluzo-S」を導入するよう働きかけています。
これまで、プロバイダーは、権利者団体からの申請を受け、違法なファイルを個別に削除してきました。
これには大きな負担がかかるのですが、「Fluzo-S」を導入すれば、違法なファイルのアップロード直後にこれを特定し削除することができます。
権利者団体やプロバイダーの負担が軽減されることが見込まれ、違法なファイルの根絶に向けて大きな前進となることが期待されています。
ただし、この手の対策には問題がないわけではありません。
正当に作成したファイルであるにもかかわらず、ロボットの誤検出によって誤って削除してしまった場合です。
一般に、ロボットの検出精度を高めれば、違法なファイルの削除効果は高まりますが正当なファイルを誤って削除してしまう確率も高まります。
つまり、検出精度が高いということは、少しでも疑いがあると判断した場合にファイルを削除することとなるからです。
逆に、ロボットの検出精度を下げれば、正当なファイルを誤って削除してしまう確率は低くなりますが違法なファイルの削除効果も低くなります。
つまり、検出精度が低いということは、相当な疑いがあると判断しない限りファイルを削除しないこととなるからです。
ロボットで自動的に行う場合は、このような相反の関係があるので、必ずしもよい面だけではないのです。
ちなみに、違法なファイルの削除効果を高め、かつ、正当なファイルを誤って削除してしまう確率を低くするアイデアがあれば、そのアイデアは「特許」の可能性があります。