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音楽教室から著作権料を徴収方針

こんにちは。
弁理士の渡部です。


JASRACが音楽教室から著作権料(演奏料)を徴収することが検討されているとの報道がありました。
目を引く内容ですが、記事の内容が少し分かりにくかったので解説を加えます。



引用:音楽教室から著作権料を徴収方針…JASRAC


日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ピアノなどの音楽教室での楽曲演奏について著作権料を徴収する方針を固めたことが2日、分かった。
教室側は反発しており、紆余うよ曲折も予想される。


著作権法は、著作物を公衆に対し演奏する「演奏権」は、著作者が専有すると定めている。JASRACはこの規定を根拠に、これまでカルチャーセンターや歌謡教室などから著作権料を徴収してきた。



著作権法では、楽曲を演奏する権利が定められています。
これを「演奏権」といいます。
どういう権利かというと、公衆に聞かせることを目的として楽曲を演奏する場合は、著作権者の許諾を得なければならないという内容です。
著作権者は、著作権料を支払うことを条件に楽曲の演奏を許諾します。


演奏権は、楽曲の著作権者(作詞者や作曲者)が持っていますが、楽曲の著作権者から委託を受けたJASRACが著作権者に代わって著作権料を徴収します。


ここで、問題となるのが「公衆に聞かせることを目的」という点です。
カルチャーセンター等は、公衆(社会一般の人々)に聞かせるために楽曲を演奏しているとされてきたので、これまでJASRACに著作権料を支払っていました。


これに対し、音楽教室は、先生が生徒に聞かせるために楽曲を演奏していたものの、著作権料を支払わずにすんでいました。



引用:新たに徴収を検討しているのは音楽教室での演奏。生徒や教師が他の生徒の前で練習、指導するが、JASRACはこれらも「公衆の前での演奏」にあたると判断。来年1月から徴収を始めたいとしている。



ところが、これにメスが入ったというのが今回の報道の内容です。
つまり、音楽教室において先生が生徒に聞かせるために楽曲を演奏することは、公衆に聞かせるために楽曲を演奏することになるとJASRACが判断したことから、音楽教室からも著作権料を徴収する方針を固めました。


これに対し、音楽教室側は反発しています。



引用:全国で約3300の教室を運営するヤマハ音楽振興会の三木渡常務理事は「演奏権が教室内の生徒や先生に及ぶというのは理解できない。文化的な活動にもそぐわない」と話している。



ここまでご覧いただいた皆様も違和感があるのではないでしょうか。
そう、その違和感は、生徒が公衆(社会一般の人々)に該当するのか、という点だと思います。


実はこの原因、「公衆」という言葉に対する一般の認識とはちょっと違う内容を著作権法が規定しているからです。


著作権法では、「公衆」には「特定かつ多数の者を含む」と規定されています。
私たちが公衆という言葉を聞いたときに思い浮かべるのは、社会一般の人々といっても不特定多数の人を思い浮かべますが、著作権法では、特定多数の人も含まれるとしています。
つまり、教室からみて生徒のように特定の人も対象となり、このような生徒が数人いて音楽教室が成り立っているのであれば生徒達は「特定多数の人」である、という考えです。


それってちょっと強引なんじゃないの?って思うかもしれません。
ですが、著作権法が実現したいことを端的にいうと、「他人の楽曲を使ってお金を稼いだら、そのうち一部は著作権料として支払ってね」ということです。
この線引きとして、営利目的なら著作権料の対象、個人的な利用なら著作権料の対象外というルールにしていて、これを表現するために「公衆」という言葉を使っています。


音楽教室が個人的な利用であるとはいえませんので、この観点から考えると、売上の一部を著作権料として支払うべき対象になるのではないか、というのがJASRACの意見です。



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