おはようございます。
弁理士の渡部です。
本日は、IoTの商標登録についてお話しします。
IoTの商標登録を取得しようとする場合、どの商品・サービスの区分で商標登録を取得したらよいのでしょうか。
商品・サービスと区分とは
商標登録を取得するときは、商標を使用する商品やサービスを指定します。
商標登録が取得できると、出願のときに指定した商品・サービスについて商標を独占的に使用することができるようになります。
この商品・サービスは、特許庁が「区分」という分類で整理しています。商品・サービスを指定する場合、どの区分に分類された商品・サービスであるかが分かるように、区分も併せて指定します。
それでは、IoTの商標登録は、どの区分に分類された商品・サービスを指定すればよいのでしょうか。これが今回の記事でお伝えするテーマです。
自動車IoTの事例
これを分かりやすくお伝えするために、事例を挙げて説明します。
以下の事例は、福岡工業大学が取得した自動車IoTの特許です。
仕組みを簡単に説明します。
このIoTは、自動車にセンサーを取り付け、センサーから取得した情報をもとに津波を観測するというものです。
一体どうやって津波を観測するのでしょうか。
まず、自動車に角速度センサーを取り付けます。
角速度センサーというのは、分かりやすくいえば自動車がスピンしたことを検出するセンサーです。
自動車が津波に遭遇し浸水すると自動車がスピンするので、角速度センサーからの情報により津波に遭遇したと判定することができます。
つまり、複数の自動車のセンサーから情報を集め、自動車の位置情報と照らし合わせコンピュータ上でマッピングすると、津波がどの地域にどの規模で押し寄せているのかが分かります。
このような浸水マップを避難区域のユーザに配信して共有すれば、津波を避けて避難することができます。
商品・サービスが何かを考える
商標登録を取得するときは、商標を使用する商品やサービスを指定する必要があるので、上記IoTシステムにおいて商標を使用したい商品・サービスが何であるかを考える必要があります。
まず、分かりやすく、上記IoTシステムを3社が共同で実現していると仮定しましょう。
A社は、自動車メーカです。
B社は、センサーのメーカです。
C社は、クラウドサービスを提供するASP(Application Service Provider)です。
そして、上記IoTシステムについて使用したい商標を「ツナミクル」とします。
では、A社を見てみましょう。
A社は、自動車を製造・販売しています。
A社が取り扱う商品は「自動車」です。
もし自動車の製品名として「ツナミクル」を使いたい場合は、商品として「自動車」を指定します。
次に、B社を見てみましょう。
B社は、角速度センサーを開発し、角速度センサーを自動車に取り付け、位置情報を収集します。
B社が取り扱う商品は「角速度センサー」です。
もし角速度センサーの製品名として「ツナミクル」を使いたい場合は、商品として「角速度センサー」を指定します。
また、B社が取り扱うサービスは「位置情報の収集」です。
もし位置情報を収集するサービス名として「ツナミクル」を使いたい場合は、サービスとして「位置情報の収集」を指定します。
次に、C社を見てみましょう。
C社は、位置情報をデータベースに記録・分析し、津波が発生したときに津波マップを生成し提供します。
C社が取り扱うサービスは「クラウドコンピューティング」です。
もしクラウドコンピューティングのサービス名として「ツナミクル」を使いたい場合は、サービスとして「クラウドコンピューティング」を指定します。
またC社は、ユーザが利用するスマホアプリを提供している場合、その取り扱い商品は「スマホアプリ」です。
もしスマホアプリの名称として「ツナミクル」を使いたい場合は、商品として「スマホアプリ」を指定します。
商品・サービスが洗い出せたので、このなかから「ツナミクル」を使用する必要な商品・サービスを選んで指定すればよいのです。
もう一つの観点として、自社としては使用しない商品かもしれませんが、他社がその商品に「ツナミクル」を使うとユーザが混同することが予想される場合は、その商品も含めるかどうかを検討します。
さて、以上は3社が共同で実現した例を説明しました。
1社・2社で実現する場合、又は4社以上で実現する場合も、これと同じ考え方で商品・サービスを洗い出せばよいでしょう。
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