毎年、知的財産創造や保護及び活用に関する施策に基づき、知的財産推進計画を政府は作ります。
2016年度の知的財産推進計画で目玉となっているは、AI(人工知能)が作った知的財産をどう取り扱うか?ということです。
AIによるモノの創作は既に始まっていますが、法律はまだ未整備です。
果たしてAIの作ったモノの著作権はいったい誰のものとなるのでしょうか?
将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
「知的財産推進計画2016」の目玉はAIが作った知的財産
政府は、毎年、我が国の知的財産創造、保護及び活用に関する施策について計画を作り、この計画をもとに施策を推進しています。
今年も、「知的財産推進計画2016」という名前でその計画を作る審議会がはじまっています。
各年の知的財産推進計画にはそれぞれの目玉がありますが、知的財産推進計画2016では、なんと、AIが作った知的財産について知的財産権をどう取り扱うか、ということも取り扱われております。
AIが作った知的財産に注目が集まってる理由
なぜ、AIの知的財産権の取扱いに政府が大きく注目しているのでしょうか?
それは、知的財産権に関する法律が、AIの進歩に対してまったくといってよいほど未整備だからです。
例えば、著作権法では、著作物を創作した「人」が著作権を取得する決まりとなっていますが、著作物に基づく権利が「人」以外から発生することは想定されていません。
特許法、実用新案法、意匠法についても同様です。
しかし、現在においては、AIが楽曲や歌詞を作ることもあり、AIが作った楽曲や歌詞の著作権が一体誰のものになるのかといった論争が勃発しています。
例えば、グーグルのディープ・ラーニング研究チーム「グーグル・ブレーン」は今年6月に、芸術作品を創作するAI「マジェンタ(Magenta)」が80秒のピアノ曲を作曲したことを発表しました。
以下がそのピアノ曲です。
正直な話、マジェンタが作った楽曲は、今のところベートーヴェンのそれには遥か及びません。
しかし、AIは経験から学習することで進歩し続ける特性を持っているため、いずれ作曲のクオリティが劇的に改善されたときに、AIが作曲した楽曲が大きな商業価値を持つ可能性があります。
「作詞:中島みゆき 作曲:アトム(AI)」というようなことも、今後ありうるのです。
古い漫画ですが、アトムの描いた世界はまさにそのような世界で、これが実現したときに起きる論争が、AIの作曲した楽曲の著作権は誰のものか?ということです。
AIによるモノの創作は著作権に大きな改革をもたらす
これに対し、著作権はAIのものではないか?という考えもあるかもしれませんが、人や法人以外が権利を有するというように法律を作り替えるのは制度の根幹に関わるので難しいことが予想されます。
おそらく、知的財産推進計画2016では、AIが作った著作物の著作権は、AIを制作・運用・管理する人や、法人が取得できるように計画されているのではないかと考えます。
それにしても、これまでモノを創る「創作」という行為は「人」にしか行えないとされてきた前提をひっくり返すことになりますので、AIがモノを創りはじめたことが、著作権という概念に大きな改革をもたらすことは間違いなさそうです。