「ネスカフェ」といえばコーヒーブランドで、「キットカット」といえばチョコレートのブランド。
これは多くの人が知るところですが、両者を販売する会社の名前をパッと思い浮かべられる人はあまりいません。
2つのブランドはともにネスレ株式会社のブランドです。
ネスレが採用する「個別ブランド方式」のメリット・デメリットをご紹介します。
将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
マスターブランド方式のメリット・デメリットをおさらい
以前、「BMWが自社名を全面に打ち出すワケ~マスターブランド方式のメリットとデメリット」という記事の中で、会社名を全面に打ち出すブランド戦略として、「マスターブランド方式」をご紹介しました。
マスターブランド方式を採用するメリットは、企業ブランド名という1つのブランド名をPRすることに対して、集中的に投資できるため、ブランドのPR効率が良いことです。
ただし、このブランド方式には、「商品のエッジがぼやけてしまう」「一つの商品で起きた風評被害が会社全体にリスクを及ぼす」というデメリットも存在します。
そこで本日は、もう一つのブランド名を表示する方式として、個別ブランド方式をご紹介します。
マスターブランド方式と対極関係にある方式ですので、マスターブランド方式と比較しながら考えていただくと、理解しやすいでしょう。
個別ブランド方式の代表例となる企業「ネスレ」
個別ブランド方式は、その企業の製品やサービス又は広告等においてブランド名を表示する場合に、プロダクトブランド名(製品名)を全面に押し出す方式をいいます。
個別ブランド方式を採用する代表的な企業の例を挙げると、ネスレを挙げることができるでしょう。
ネスレは、自社製品「コーヒー」をPRする場合、企業ブランド名「ネスレ」よりも、プロダクトブランド名「ネスカフェ」を全面に押し出してPRを行っています。
また、自社製品「チョコレート」をPRする場合も、企業ブランド名「ネスレ」よりも、プロダクトブランド名「キットカット」を全面に押し出してPRを行っています。
「ネスカフェ」「キットカット」いずれも皆さんご存知だと思いますが、「ネスレ」という会社が販売していることは、パッとひらめきませんよね。
同じように個別ブランド方式を採用している企業としては、ファーストリテイリングも有名です。
ファーストリテイリングは、ユニクロ、GU、セオリーなど、個別ブランドで認知を図っています。
個別ブランド方式のメリットとデメリット
さて、個別ブランド方式を採用する際は、マスターブランド方式を採用する場合と同様に、メリットとデメリットがあります。
まず、メリットとしては、自社が提供する複数の製品のうち1つの製品で悪い評判を受けても、その製品のプロダクトブランドの評価が下がるだけで済む場合が多いことが挙げられます。
他のプロダクトブランドや企業ブランドについて、評価の低下を最小限に抑えることができるので、リスク分散型のブランド方式といえるでしょう。
また、製品ごとにプロダクトブランド名を表示するので、各プロダクトブランドがどの製品に強みがあるブランドなのかが分かりやすく、ブランドのイメージを明確に印象づけられることです。
ネスレを例に挙げると、「ネスカフェ」ならコーヒーのブランドであり、「キットカット」ならチョコレートのブランドであることは、誰もが知るところです。
これに対し、デメリットとしては、複数のプロダクトブランドをPRするため、それぞれのブランドに対して投資する必要があるので、コストがかかり、ブランドのPR効率が悪いことが挙げられます。
これら、マスターブランド方式と個別ブランド方式のメリット・デメリットをわけると、以下のようにまとめられます。
ブランド方式 | マスターブランド方式 | 個別ブランド方式 |
---|---|---|
メリット | コストが安くPR効率が良いこと | リスク分散型であること |
デメリット | リスク集中型であること | コストがかかりPR効率が悪いこと |
マスターブランド方式と個別ブランド方式のメリット・デメリットは、このように対面関係にあります。
よく考慮し、自社に合った方式を採用することをお勧めします。