私たちは時として、ブランド戦略の一環として、自分達の商品を美しく見せるために、商品の色に思考を凝らしますが、それを認知してもらうには、長い年月と圧倒的な販売実績が必要になります。
これらの条件が整うならば、2015年に始まった「色彩のみからなる商標」を出願するのは一考です。
既出願者を当てるクイズとともに、その現状もお伝えします。
将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
目次
色で顧客に商品を識別してもらうのは難しい
色は、商品が当然備えているものです。
タイヤは黒いですし、どら焼きは茶色の焼き目がついています。
また、私たちは時として、ブランド戦略の一環として、自分達の商品を美しく見せるために、商品の色に思考を凝らします。
ただし、消費者が商品の色を見たときに、基本的に顧客は「誰が作った商品なのか?」という連想には、なかなか繋がらないものです。
2015年にできた「色彩のみからなる商標」
しかし、これには例外があります。
商品に同じ色を長年使い続け知名度が高くなると、その色を見たときに多くの消費者が「これは、あの企業の商品だよね」と連想するくらい、色と商品が密接に結びついている状態があります。
こうなると、色は「単なる商品の色」というレベルを超え、誰が作った商品なのかを表す色になるので、そういうものであれば、商標登録で保護しましょうという考え方が、近年ブランド戦略の潮流としてでき始めています。
この考えを支えるべく、2015年の4月に商標法の改正でできた、新しい商標の範囲を「色彩のみからなる商標」といいます。
ですので、市場で何の販売実績もない段階で色商標を出願しても商標登録を受けられることはできませんが、例えば「MONO消しゴム」のように、長年使用し高い知名度があれば、商標登録が可能となってくるかもしれません。
あなたはわかるか!?「色彩のみからなる商標」当てクイズ
ここで少し息抜きとして、特許情報プラットフォームで検索した、出願中の「色彩のみからなる商標」を見てみましょう。
皆さんはパッと見て、どの企業が商標を出願しているかわかるでしょうか?
問1:商願2015-029957(難易度☆)
こちらの商標を申請しているのは、株式会社王将フードサービスです。
色の囲いに「餃子の王将」と入れなくても、分かる人はわかりそうですね。
では、次です。
問2:商願2015-030037(難易度☆)
こちらは、もう皆さんわかりそうですね。
株式会社セブン-イレブン・ジャパンも、色彩のみからなる商標を出願しています。
問3:商願2016-115749(難易度☆☆)
こちらの商標を申請しているのは、カード会社の株式会社JCBです。
JCBのカードを持っている人は予想がついたかもしれませんが、持っていない人は難しかったのでは?
ここからは、少し難しくなりますよ。
問4:商願2015-065316(難易度☆☆☆※引っ掛けあり)
こちらは、阪神タイガース…ではありません!
株式会社ドンキホーテホールディングスの、色彩のみからなる商標出願になります。
ひっかかった方、多いのでは?
次のクイズがわかった方は、かなり凄い目利きさんかもしれません。
問5:商願2015-120630(難易度MAX)
これを見て、すぐにどの会社が商標出願者かわかった方は、かなり天才かもしれません。
こちらの出願者は、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)です。
単色だと、もう識別ができないですよね。
出願するのは簡単だが通過するのは難しい現状
上記のクイズで挙げたように、色彩のみからなる商標には、2種類の出願形式があります。
複数の色の組み合わせからなる色商標と、単色からなる色商標です。
セブンイレブンのように複数の色の組み合わせならば、企業と商品を結びつける連想が生まれるかもしれませんが、単色は、非常に敷居が高いと考えられます。
実際に、制度がはじまってから1年半以上が経過しましたが、出願件数471件について審査を通過した案件は、今のところありません。
審査を通過すれば、非常に強い商標となりますが、販売実績が相当のものであり、それにかかるコストが払えないと、出願に対する対価を得にくい現状にあるでしょう。