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他人の商標の引用

よく、「※iPhone、iPad、及びAppleロゴは、米国Apple Inc.の米国及びその他の国における登録商標又は商標です。」という表記を見かけませんか。
この表記は、記事やカタログ等で他人の商標が引用されている場面において見かけることがあります。
この表記はどういうことなのでしょうか。
この表記を付しておけば、他人の商標を「使用」することが認められるのでしょうか。
「商標の使用」と「商標の引用」には明確な区別があります。
本記事では、これらの違いについて解説します。

この記事を書いた人
弁理士 渡部仁

将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。

「商標の使用」とは

「商標の使用」とは、自社の商品やサービスを示すために他人の商標を使用することをいいます。
具体的には、以下のような行為が該当します。

・自社の商品やサービスに他人の商標を表示すること
・自社の広告に他人の商標を表示すること

これらはいずれも、自社の商品やサービスを示すために他人の商標を使用していることが分かります。
このように、あたかも他人の商品やサービスであるかのように混同させる使用は、消費者が間違えて商品やサービスを購入してしまうおそれがあるので商標権の侵害となります。
ですから、例えば、アサヒグループホールディングス株式会社の許諾なく、自社の缶ビールに「スーパードライ」と大きく表示し、裏面に、「※スーパードライはアサヒグループホールディングス株式会社の登録商標です。」と表記しても、認められません。

「商標の引用」とは

これに対し、「商標の引用」とは、他人の商品やサービスを示すために他人の商標を使用することをいいます。
具体的には、以下のような行為が該当します。

・商品やサービスの説明や比較において他人の商標を表記すること
・ニュースや報道において他人の商標を表記すること
・著書や論文において他人の商標を表記すること

これらはいずれも、自社の商品やサービスではなく、他人の商品やサービスを示すために他人の商標を使用していることが分かります。
このような使用は、他人の商品やサービスのことを指していることが明らかなので、消費者が間違えて商品やサービスを購入することはないから問題はありません。
ですから、例えば、自社の缶ビールの商品説明として「このビールはスーパードライよりも辛口です。」と小さく記載し、裏面に、「※スーパードライはアサヒグループホールディングス株式会社の登録商標です。」と表記すれば大丈夫でしょう。
アサヒビール社の商標「スーパードライ」を表記することを避けるために「アサヒビール株式会社が製造・販売する辛口ビール」と表記することも考えられますが、このような場合は、「スーパードライ」と表記した方が、アサヒビール社の商品の内容を端的に伝えることができます。

以下は、他人の商標を引用する場合の具体的な例です。

1. 自社の商品やサービスが他人の商品と互換性があることを説明するために、他人の商標を引用する場合

例えば、他社のプリンタABC(ABCは他人の商標)に使用できるインクカートリッジを販売している場合に、プリンタABCに使えることを示すために自社のインクカートリッジに「for ABC」「ABC用」という表記をする場合です。

2. 自社の商品やサービスを他人の商品と比較するために、他人の商標を引用する場合

例えば、「当社の商品は、他社の商品ABC(ABCは他人の商標)と比べ、価格が500円安く、対応OSがAndroidにも対応している点が特徴です。」という表記をする場合です。

3. 自社の商品やサービスが他人からライセンスや供給を受けていることを説明するために、他人の商標を引用する場合

例えば、「当社のサービスは、ABC(ABCは他人の商標)の機械学習技術を活用した高精度な翻訳サービスです。」という表記をする場合です。

これらの場合でも、上記で説明した点に注意する必要があります。

なお、商標法では「引用」という言葉は規定されていません。
本記事では、商標の使い方として上記のとおり2つあることから、これを区別するために「使用」「引用」の言葉で説明しています。

普通名称化の防止のマナー

「※iPhone、iPad、及びAppleロゴは、米国Apple Inc.の米国及びその他の国における登録商標又は商標です。」という表記は、他人の商標が普通名称として消費者に認識されてしまうことを防止する役割もあります。
消費者が、文中の商標を見て、特定企業の商品を指し示しているのか、そうではなく商品の普通名称を指しているのかを区別できるかどうかは重要な問題です。
登録商標があたかも商品の普通名称であるかのような使い方をされると、商標としての機能が失われてしまいますので、他人の商標を文中で引用するときは、その権利者に配慮して「普通名称ではありません。」という断り書きを入れるのがマナーとなっています。
それが冒頭の表記ということになります。

普通名称化は企業のブランドを損なうことにつながります。
このため、企業としても細心の注意を払っているところですので、ブランド毀損やトラブル防止からも他人の商標を引用する場合は冒頭の表記を付すことを心がけましょう。

その他、例えば次のように、他人が引用記載のルールを作成し、これを要請している場合は、そのルールに従うことが大切です。

アルバックテクノ社が要請する引用記載のルール
登録商標の引用記載に関して

まとめ

「商標の使用」と「商標の引用」には明確な区別があります。
他人の商標を表記する場合は、(1)自社の商品やサービスを示す表記にしないこと(間接的に示す表記もダメです。)、(2)他人の商品やサービスを示す表記にすること、(3)普通名称化に配慮することの3点に注意しましょう。

商標引用Q&A

Q1.他人の商標を引用する場合、どのような表記方法が採用できますか?

A1. 他人の商標を引用する場合、上記例のほか、例えば、次の表記方法が採用できます。
・他人の商標を引用符("")で囲む
・他人の商標に商標記号(®、™)を付ける
・脚注などで出典を明記する

Q2.他人のブランドの不満や批判を行うために他人の商標を引用することは認められますか?

A2. ブランドに対する不満や批判は、上記問題とは別の問題が生じます。
例えば「シャネル偽物」というような引用は、他人のブランドを故意に貶めるような表記になりますので、名誉毀損に該当するおそれがあるので注意しましょう。

Q3.著作物の引用とは何が違いますか?

A3. 著作物の引用と商標の引用はまったく異なりますので混同しないように注意しましょう。
著作物の引用とは、他人の著作物の一部を自分の著作物に利用することをいい、著作権法第32条にその要件が規定されています。
これに対し、商標の引用とは、上記のとおり、他人の商品やサービスを示すために他人の商標を使用することをいいます。

Q4.他人の商標の引用に関する法律上の規定はありますか?

A4. 商標法では「引用」という言葉は規定されていませんが、商標法第26条には、次のとおり、他人の商標であっても使用することができる例外が規定されています。
・自己の氏名等を普通に表示する商標
・商品やサービスの普通名称や品質表示を普通に表示する商標
・商品やサービスの慣用商標
・商品が当然に備える特徴のみからなる商標
・その他、特定企業の商品やサービスであることを認識できない商標

Q5.商標と普通名称の違いは何ですか?

A5. 商標は、特定企業の商品やサービスを示すために使用される標識です。
例えばチョコレート菓子について「ポッキー」(=江崎グリコ社のチョコレート菓子)がそれです。
これに対し、普通名称は、商品の一般名称を指します。
例えば、チョコレート菓子について「チョコレート」がそれです。

Q6.商標が普通名称化してしまうとどのような問題がありますか?

A6. 商標が普通名称化してしまうと、以下の問題が発生します。
・権利者が、自社の商標を独占的に使用できなくなる(商標法第26条)
・消費者が、商品やサービスがどの企業のものなのか認識できなくなる

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