おはようございます。
弁理士の渡部です。
商標法は、商標登録できる条件ではなく、商標登録できない条件が規定されていて、商標登録できない条件に該当しない場合は、商標登録を認めるという制度になっています。
どういった商標がこれに該当するかができるだけ予測できるように、商標登録できない条件は具体的に規定されています。
しかし、商標法には、商標登録できない条件として一つ抽象的な規定が設けられています。
商標登録できない具体的な条件には該当しないが、商標登録するには躊躇があるといった場合に適用される「商標登録できないその他の条件」(公序良俗に反する)というものがあります。
例えば、「徳川家康」「坂本龍馬」などの歴史上の人物名は、商標登録できない具体的な条件には該当しないが、商標登録できないその他の条件に該当するものとして、商標登録を受けられないようになっています。
歴史上の人物名は、地域の財産ともいえ、一事業者が商標登録によって独占することは好ましくなく、地域の事業者が広く使えるようにした方がよいと説明されています。
歴史上の人物名ではないのですが、地域の財産として地域の行政等が大切にしている名称があります。
例えば、「○○祭り」のような名称です。
これも、商標登録できないその他の条件に該当すると指摘を受ける場合があります。
この場合、行政から許諾が得られれば商標登録を受けられることがありますが、行政が、一事業者が商標登録によって名称を独占することを許諾することは事実上難しいといえます。
行政は、その公益的な立場から、一事業者の利益のために、地域の他の事業者が名称を使えなくなる不利益につながることには協力することはできないからです。
これは簡単にいえば、特許庁は「地域の行政がOKすればいいよ」とはいうものの、地域の行政は事実上OKは出せない、という流れであり、手続上、商標登録は受けられないことを意味します。
難しいことに、地域の財産ともいえる名称「○○祭」と同一の商標だけでなく、これを一部に含む商標も指摘を受けることがあるので、商標のなかに、その地域でよく使われている名称を一部でも使っている場合は注意が必要です。
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