時代の流れとともに、地域ブランドの価値はますます高まり、地域産品を巡る経済的な活動は活発化しています。
そんな中注目を集めるのが、神奈川県二宮町で生まれた「湘南オリーブオイル」です。
今回、この地元産オリーブオイルに新たなロゴマークが誕生し、さらには地域団体商標として登録が認められました。
本記事では、その経緯や地域団体商標が地元経済にもたらす影響についてお話ししていきます。

この記事を書いた人

弁理士 渡部 仁（Hitoshi Watabe）

将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。

愛されるブランドの誕生背景

二宮町では、2004年に地元の新たな農産物としてオリーブの栽培が始まりました。
そして、地域全体での協力と努力の結果、2011年に「湘南オリーブオイル」として商品化に成功。
地元産のオリーブが生み出す高品質なオイルは、年々その生産量を増やし、多くの人々に支持されています。

新たなロゴマークの誕生とそのデザイン

「湘南オリーブオイル」と「湘南オリーブ」の新しいロゴマークは、東海大学の学生がデザインしたものです。
オリーブオイルのロゴでは、落ち着いた黄色と深い青色を使用し、高級感と湘南の海をイメージさせるデザインに仕上がっています。
一方、オリーブのロゴは、若々しい緑色を基調にしており、幅広い世代に受け入れられるよう配慮されています。
デザインを手がけた学生は、二宮高校出身であるという地元愛溢れる背景をもっており、その情熱がロゴに込められています。

地域団体商標とは

地域団体商標とは、地域に関連する産品に対して、その地域の団体が登録を受けることができる商標です。
これは、地域の発展とブランド保護を目的としています。
地域団体商標は、文字だけからなる商標で、次の3つのパターンでのみ認められます。

1. 地域の名称及び商品の普通名称を表示する文字のみからなる商標
2. 地域の名称及び商品の慣用名称を表示する文字のみからなる商標
3. 地域の名称、商品の普通名称又は慣用名称及び商品の産地を表示する際に付される慣用文字（例えば「本場」「特産」「名産」）を表示する商標

ロゴマークの商標登録の特徴

一方、ロゴマークによる商標登録は、デザインや図案が特徴的なマークを指します。
例えば、「湘南オリーブオイル」という言葉だけでなく、独自のデザインや図案を加えたロゴマークを商標登録することができます。
これにより、ロゴマーク全体として独自性が認められれば、文字単独では登録が認められない場合でも、商標登録を受けることが可能となります。

地域団体商標とロゴマークの商標登録の違い

地域団体商標とロゴマークによる商標登録では、保護の範囲や強さに違いがあります。
「湘南オリーブオイル」のような地名と普通名称の組み合わせは、取引で使用されることが多いことから一般に開放され、他社も自由に使用できます。
このため、ロゴマークだけで商標登録をした場合、「湘南オリーブオイル」の文字を他社が使用しても使用中止を求めることができません。
これに対し、地域団体商標の場合、登録された文字について権利が認められるので、「湘南オリーブオイル」の文字を使用する他社に対し、使用中止を求めることができます。
これが地域団体商標の強さです。

地域団体商標には、「湘南オリーブオイル」について一定の知名度があることが求められます。
このため、二宮町は、「湘南オリーブオイル」を使って商品を販売したりプロモーションを行ったりして知名度を獲得した上で、地域団体商標の出願を行っています。
ここが地域団体商標の１番難しい要件ですが、2024/3/22に、「湘南オリーブオイル」について無事に地域団体商標の登録が認められたようです。

まとめ

「湘南オリーブオイル」と「湘南オリーブ」が新たなロゴマークと地域団体商標を手に入れたことは、地元二宮町にとって大きな一歩です。
これは、地域産品の価値を高め、地元経済に対する大きな意義を持ちます。
新しいロゴマークに込められたデザイナーの熱意と、地域団体商標として守られるブランド力は、これからも二宮町の象徴として全国に広がっていくことでしょう。
地域産品が一つの文化として育まれていく様は、私たちにとっても大いなる魅力となります。

湘南オリーブオイルについて解説したブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
湘南オリーブオイルの魅力を知る！地域団体商標の効果とは