先日、AIで作られたロゴについて、こんな話を聞きました。
人間のデザイナーは、全体と細部を見ながら、いろいろなところでバランスを取っている。
ところがAIが作ったものには、それがない。
一見きれいなのだけれど、何となく気持ちが悪い。
なるほど、と思う一方で、私は少し引っかかりました。
それは、本当にロゴの造形を見て感じている違和感なのだろうか。
「AIが作った」と知っているから、気持ち悪いところを探しているだけではないのか。
考えているうちに、私の関心は「AIのデザインは上手いか、下手か」から少し離れていきました。
そもそもブランドマークを見るときに、何を評価すればよいのだろう。
今回は、そこから考えてみます。
将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
目次
「AIが作った」という情報は評価に影響する
「AIが制作した」と示されること自体が、作品の評価に影響することはあります。
2023年に発表されたBellaicheらの研究では、実際にはAIが生成した絵画に、「人間が制作した」「AIが制作した」というラベルをランダムに付けて評価してもらいました。
すると、「人間が制作した」と表示された作品の方が、好ましさ、美しさ、深み、価値といった複数の項目で高く評価されました。
つまり、作品そのものだけでなく、「誰が作ったと思っているか」も評価に影響していたことになります。
もちろん、これは絵画を対象とした研究です。
この結果だけから、「AIで作ったロゴに感じる違和感は、全部偏見だ」とまでは言えません。
ただ、「AIが作ったと分かったうえで、何となく気持ちが悪い」という感覚だけを根拠に、AI特有の造形上の問題だと断定するのも少し危ない。
最初に私は、そう思いました。
造形上の違和感は別に検討できる
もっとも、AIだと知らされたことで評価が変わる可能性があるからといって、造形上の違和感まで全部消してしまう必要はありません。
AIが作ったことを知らなくても、
- 少し重心が落ち着かない。
- 一部分だけ妙に詰まって見える。
- 小さくすると特徴が消える。
- 白黒にすると、そのマークらしさがなくなる。
そういうことがあるなら、それはAIへの好き嫌いとは別に検討できます。
つまり、二つを分けた方がよさそうです。
- 一つは、「AIが作った」という情報が、自分の評価に影響していないか。
- もう一つは、そのマーク自体が、ブランドマークとしてちゃんと働くのか。
後者なら、もう少し具体的に確かめることができます。
ブランドマークとして何を評価するか
ここで、問題を少し置き直してみます。
そもそも、AIがデザインを上手にできるかどうかを議論する必要があるのでしょうか。
ロゴを、会社や商品を見分けるためのブランドマークとして使うなら、単に「きれいな画像ができたか」だけでは十分ではありません。
大きな画面では、とてもきれいに見える。
でも、スマートフォンの小さなアイコンにしたら特徴が消える。
色が印象的だったので選んだ。
でも、単色印刷にすると普通の図形になってしまう。
単独で見ると格好いい。
ところが競合企業のマークと並べると、急に見分けにくくなる。
こういうことは、「AIか人間か」とは別の問題です。
ブランドマークには、繰り返し見られ、覚えられ、他と区別され、様々な大きさや媒体で使われる、という仕事があります。
だとすると、見るべきなのは、きれいかどうかだけではありません。
- 覚えられるか。
- 見分けられるか。
- 小さくしても特徴が残るか。
- 色や質感を取っても、その形だと分かるか。
- 競合の中に置いたときにも埋もれないか。
そういう評価軸も必要になります。
問題は「AIか人間か」ではない
最初の話を聞いたとき、私は、「AIだから気持ち悪い、という見方にはバイアスがあるのではないか」と考えました。
今も、その疑いは残っています。
ただ、それとは別に、ブランドマークには仕事があります。
- 覚えられること。
- 見分けられること。
- 使う環境が変わっても、その特徴が残ること。
そう考えると、問題は、「AIと人間のどちらがデザイン上手か」ではありません。
むしろ私が気になるのは、「AIが作ったものをブランドマークとして使おうとしたとき、何を見落としやすいのか」ということです。
AIは下手だから問題なのではない。
むしろ、かなり上手に「それらしいもの」を作れるからこそ、別の問題が起きるのではないか。
次に考えたい「平均化」
その中で、次に考えてみたいのが「平均化」です。
次は、「上手なのに、覚えられない」という問題を考えてみます。
