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メール一通の重さを考える――特許事務所がメール基盤を整える理由

メール基盤と業務を考える[3/3]

ここまで、事務所のメール環境を見直しながら、正規の送信経路を把握することや、小さいうちに全体を整理する意味を考えてきました。

では、そもそも特許事務所で、なぜここまでメール環境を整える必要があるのか。

自分たちの仕事へ戻って考えると、理由はかなり具体的でした。

特許事務所では、一通のメールが、お客様の重要な判断を運んでくることがあります。

この記事を書いた人
弁理士 渡部仁

将星国際特許事務所、所長。AI、IT、ソフトウェア、ビジネスモデル、ネットワーク分野の特許を専門とする。データベーススペシャリスト等の資格を持ち、技術内容の整理から特許出願・権利化まで幅広く支援している。講演活動も行っている。

メールの重要性は、通数では測れない

重要なのは、一日に何通送受信するかではなく、その一通に何が書かれているかです。

例えば、

「この内容で出願してください」

「この国にも出願してください」

「今回は権利を維持しません」

といった判断が、メールで伝えられることがあります。

もちろん、実際にどのような方法で確認するかは案件や内容によって異なります。メールだけで何でも判断するという意味ではありません。

それでも、お客様から届いたメールの内容を受けて、その後の出願や外国での手続、権利維持に関する対応が動くことはあります。

一通のメールが、その後の手続を動かすことがある。

特許事務所でメール基盤を考えるとき、私はここが大きいと思います。

「漏れない」だけでは足りない

メールのセキュリティというと、まず情報漏えいを防ぐことを考えます。

特許事務所では、お客様から技術や事業に関する情報を預かるため、それは当然重要です。弁理士法にも、弁理士が業務上知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない旨が定められています。

ただ、今回メール環境を実際に見直してみると、それだけでは足りませんでした。

お客様の判断がメールで届き、その内容がその後の手続につながるのであれば、必要なメールが正常に届くことも重要です。

事務所が管理する正規の経路で送受信できること。

設定を変更しても、必要な業務を継続できること。

こうしたことも、同じメール基盤の問題です。

例えば、セキュリティ設定を厳しくした結果、お客様からの重要なメールが正常に扱えなくなったり、こちらから必要な連絡が送れなくなったりすれば、それでよいとは言えません。

秘密を守るだけではなく、お客様の意思表示を受け取り、必要な対応につなげられる状態を保つ必要があります。

技術名より、その設定が業務に何をもたらすか

メール環境を整えていると、SPF、DKIM、DMARCなど、いろいろな技術が出てきます。

技術として理解することは必要です。

ただ、事務所の仕事という側から見ると、技術名そのものより、その設定によってお客様とのやり取りをどう安定させられるのかの方が重要です。

正規の送信経路を整理する。

必要な経路を残す。

不要な経路を閉じる。

変更した後も、これまでの業務が正常に続くことを確認する。

既存業務を止めないよう一つずつ確認しながらメール環境を整えたのも、そのためでした。

セキュリティ設定を強くすること自体が目的ではありません。

お客様からの判断を受け取り、それを必要な手続や対応につなげる仕事を、安定して続けられる状態を作ることが目的です。

お客様から見えないところも、サービスを支えている

特許事務所のサービスとして、お客様から見えるのは、打合せ、書類、調査結果、出願手続、報告などです。

メールサーバーや認証設定が見えることは、ほとんどありません。

私自身、メール環境を整える前は、こうしたものをどちらかというと「裏側のIT」として見ていました。

でも、一通のメールが持つ意味から考えると、見え方が変わります。

お客様から重要な判断を受け取り、それを必要な手続につなげていく。

そのやり取りを安定して続けるためには、表からは見えないメール基盤も必要です。

そう考えると、メール基盤は専門サービスとは別のものではなく、そのサービスを安定して提供するための土台の一つなのだと思います。

メール環境を整えた理由

今回の見直しを、「セキュリティ対策を強化しました」と説明することもできます。

でも、自分たちの仕事から考えると、それだけでは少し違います。

一通のメールに、お客様の重要な判断が入ることがある。

その判断を受け取り、必要な対応につなげる。

だから、その経路もきちんと整えておきたい。

今回メール基盤を見直した理由は、最終的にはそこに戻ってきました。

お客様から直接見える仕事だけでなく、その仕事を安定して続けるための見えない部分も整える。

特許事務所のサービス品質を考えるとき、そういう土台も含まれているのだと思います。

本シリーズのブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
・メールセキュリティを強くするだけなら、難しくない――本当に難しかったこと
・小さい会社は、セキュリティで不利なのか――メールを整えて気づいたこと

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