「AIを使う」を発明の構造にする[3/4]
「画像をCNNで判定します」
こう聞いたとき、私はCNNの細かな仕様をすぐに聞くとは限りません。
先に考えてみたいことがあります。
もしCNNを別の画像処理モデルに替えたら、この技術はどう変わるのか。
モデル以外の条件をなるべく同じにして置き換えてみると、なぜそのモデルを選んでいるのかが見えやすくなります。
将星国際特許事務所、所長。AI、IT、ソフトウェア、ビジネスモデル、ネットワーク分野の特許を専門とする。データベーススペシャリスト等の資格を持ち、技術内容の整理から特許出願・権利化まで幅広く支援している。講演活動も行っている。
目次
別のモデルでも、説明はほとんど変わらないのか
例えば、画像を使って製品の状態を判定するシステムがあるとします。
入力する画像は同じ。
求める判定結果も同じ。
そこで、CNNだけを別の画像処理モデルに替えて考えてみます。
それでも技術の説明がほとんど変わらないのであれば、少なくともその段階では、「CNNであること」以外のところに注目した方がよいかもしれません。
反対に、モデルを替えると、画像の扱い方や処理の内容、得られる結果まで変わってしまうのであれば、話は違います。
なぜCNNなのか。
CNNのどのような性質を使っているのか。
その性質が、このシステムで実現していることとどうつながっているのか。
そこをさらに確認したくなります。
置き換えるのは、モデルが必要か不要かを決めるためではありません。
その選択が、技術の中でどんな意味を持っているのかを探るためです。
「なぜそれなのか」を聞く場所が見えてくる
例えば、別のモデルに替えると処理方法が大きく変わることが分かったとします。
すると、
なぜ、その処理が必要なのか。
という問いへ進めます。
あるいは、別のモデルでも同じ結果は得られるけれど、処理時間や扱える情報に違いが出るのであれば、その違いがこのシステムにとってどんな意味を持つのかを確認できます。
モデル選択を変えてみることで、次に聞くべき場所が見えてくるわけです。
逆に、「CNNを使っています」という説明を詳しくしようとして、最初から層の数や細かな設定を順番に聞いていくと、それらが技術全体のどこに効いているのか分からないまま、情報だけが増えることがあります。
私が知りたいのは、CNNについてどこまで詳しく説明できるかではありません。
なぜ、その技術でCNNを選んでいるのかです。
モデルの名前にも、粒度の違いがある
ここで用語について一つだけ整理しておきます。
CNNやTransformerは、ニューラルネットワークの構造・アーキテクチャに関する呼び方です。
一方、LLMは「大規模言語モデル」という広い呼称で、特定の一つのアーキテクチャを指す言葉ではありません。
したがって、CNN、Transformer、LLMを同じ粒度の三つの選択肢として比べる話ではありません。
また、「CNN」と書いたからといって、層構成や入力方法などが一つに決まるわけでもありません。
名前が細かくなれば、それだけで技術の内容まで明らかになるわけではない、という点は共通しています。
モデル名より、その選択がどこに効いているかを見る
モデルを置き換えて考えると、そのモデルが発明の中心に深く関わっているのか、それとも実装上の一つの選択なのかを整理しやすくなります。
もちろん、別のモデルでも動くからといって、そのモデル選択が技術と無関係だとは限りません。
また、特定のモデルを採用していること自体が重要になる技術もあります。
だから私は、モデル名を聞いたところで止めずに、
「別のものに替えたら、何が変わるのか」
を考えます。
そこで差が見えたなら、次はその理由を掘っていく。
モデル名そのものより、その選択が入力や処理、結果にどう効いているのかを見る方が、発明の中での役割を捉えやすくなります。
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