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今が旬のシャインマスカットを知財で斬る!!

日本の高級果物品種が海外で無断栽培される問題は、国際的な知的財産権の複雑さから生じています。
特に「シャインマスカット」や「ルビーロマン」などの品種は、国内外での人気にもかかわらず、適切な品種登録が行われていないため、無断栽培という形で権利侵害が発生しています。
本記事では、種苗法と国際条約の枠組み、そして日本の果物品種が直面する課題と対策について詳しく解説します。

この記事を書いた人
弁理士 渡部仁

将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。

シャインマスカットが外国で無断栽培

ご存知シャインマスカット。
2018年の年末に、韓国や中国で無断で栽培され、タイやベトナム市場で流通していることが話題になりました。
また先月、2021年8月にも、石川県産高級ブドウ「ルビーロマン」、山梨県産高級ブドウ「ジュエルマスカット」が韓国で無断栽培されているとのニュースがありました。

日本の果物は諸外国で人気があります。
輸出実績は継続的に増加しており、2020年の輸出額は、9223億円と発表されています。

反面、「シャインマスカット」や「ルビーロマン」等、日本の果物の品種が外国において無断で栽培され流通している事案が少なからずあります。

農水省調べでは、東南アジア各地の市場で、韓国産、中国産のシャインマスカットの流通が確認されており、シャインマスカットに限っても、その損失額は数千億円に及ぶとも言われています。
さらに、外国で栽培流通しているだけでなく、その外国産のシャインマスカットが日本に逆輸入されて日本の事業者がダメージを受ける、という問題も生じています。

果物の品種は各国ごとに品種登録が必要

なぜこのような状況が生じているのでしょうか。

果物の品種というのは、「種苗法」という法律で保護されます。
新しい品種は、出願を行い品種登録されると、果物であれば30年の間、権利者がその品種を独占できます。

種苗法は日本の法律ですので、日本国内でのみ独占の効力があります。
外国での栽培には及びません。

種苗法には、UPOV(ユポフ)条約という国際条約があり、条約の加盟国であれば日本と同様の法制度があり、韓国、中国は条約の加盟国です。
とはいえ、日本で権利を持っていれば自動的に外国(加盟国)での権利が認められる、といったものではなく、外国で保護するには各国ごとに出願し品種登録する必要があります。

外国で品種登録できなかったのはなぜか

シャインマスカットは、2006年に我が国で品種登録されていますが、韓国、中国では出願されていませんでした。
外国に出願する場合は、必ずしも我が国と同時にする必要はありませんが、少なくと流通から6年以内に外国で出願しなければ品種登録できなくなってしまいます。
シャインマスカットの流出が問題視されたときにはすでに6年以上が経過しており、外国で品種登録することができない状況になっていました。
そして、韓国、中国の事業者がシャインマスカットを無断で栽培しても法律上問題ないという状況になってしまいました。

シャインマスカットの権利者である農研機構が適切に韓国、中国に出願しておけば、このような状況にはならなかったのですが、実務の立場からすると、外国で品種登録しなかったことについて農研機構を責めるのは酷な面もあります。
外国の出願は、国によっては10年もの審査期間を要し、そのコストもかなりの額になります。また、開発した品種のすべてを、流出のおそれのあるすべての国に出願するのは、時間やコストの面で大変なことです。
さらに、個人が開発者である場合、将来の国際間流出を想定し万全な対策を行うのは極めて困難といえます。

日本としての対策強化

このような問題に対し国は、植物品種等海外流出防止総合対策事業を立ち上げ、外国における登録経費支援や侵害対応経費支援等を行っています。
また、令和3年4月に種苗法が改正されました。
この改正により、権利者の意思によらず、品種登録された種や苗木を、外国に持ち出すことを禁止できるようになり、品種の流出防止の効果が期待されています。

そういえば、種苗法の改正は、芸能人が声を上げて大きく話題となりましたね。
話題となった点についてはまた後日紹介します。

まとめ

以下、本記事のまとめです。

・果物の品種は品種登録により保護され、権利者の許可がないと栽培できない。
・ただし、保護は国ごとである。外国でも保護するには、各国ごとに出願を行い品種登録することが必要である。
・各国ごとに品種登録するには時間やコストが膨大にかかり、どの国で保護するか取捨選択が必要である。
・果物の品種は「知的財産」であり、知的財産の専門家である弁理士に聞くとよい。

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