鎌倉にお店を開いたきっかけを教えてください。

もともと地元藤沢で蕎麦処を経営していたのですが、緊急事態宣言で営業ができなかった時、思いがけず時間ができたので世の中で起きていることに目を向けてみたんです。すると、思っていた以上に食糧問題や環境問題が世界規模で起きており、調べれば調べるほど、それを知らずに生きていたことに愕然としました。
飲食店として、人が生きる根幹となる「健康」の重要性を発信することが使命だと考えるようになり、健康志向や環境問題への意識の高い住民が多く、観光客も多い鎌倉でお店を開く決意をしました。

坂部さんの考える「健康」について教えてください。

「健康」とは、肉体的・精神的健康だけでなく、地域社会や政府の健全性、地球環境の「健康」が含まれると考えています。一人一人の行動が、持続可能で「健康」な未来をつくるのだと思います。
お店では、できるだけ地元農家さんの無農薬有機野菜や地元漁師さんの魚を使っていますが、現場に足を運び、直接会って話をすることを大事にしています。
漁師さんから、リアルな声として海洋プラスチック問題や海水温上昇の話を聞けば、漁獲量が激減している今、魚を食べられることは当たり前ではなく、獲れた命を大切にいただくことの意義を痛感します。お店で出汁を取った後の鰹は、二番出汁をとらずうまみも栄養素も十分残っているため、ジャーキーとして販売したり、売上金を犬の保護活動を行っている団体に寄付したりしています。フードロスを減らすだけでなく、栄養価の高い製品を生み出し、社会に貢献するサイクルを作り出すことは地球環境の「健康」への第一歩だと考えています。

店名「SLOVE」とはどういう意味ですか？

商標登録をした「SLOVE」（第6502835号）は「SLOW」と「MOVE」のあわさった造語です。コロナ禍は飲食店にとっても厳しい状況でしたが、「ゆっくりと、でも確実に進み続ける」という意味合いを込めて店の名前に決めました。
何を食べるのか、何をするのかは私達の選択次第であり、今日の選択が10年後、20年後の身体や地球環境の「健康」をつくっていきます。ただ、それをプレッシャーに感じる必要はなく、一人一人が「ゆっくりと、確実にできることからやる」というスタンスで続けていくことが、一番の「持続可能な」秘訣だと思っています。