特許出願が公開されるのはどうしてか、一体いつなのか、そのルールにはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、一般的な公開のタイミングから、20年4カ月もの長い間公開されなかった事例まで、特許出願の公開にまつわる意外な事実をご紹介します。
将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
公開の目的
特許出願はどうして公開されるのでしょうか。
その目的は、重複研究や重複投資の防止のためです。
特許出願が公開されることで、企業は、研究開発しようとするテーマが、既に公開されている特許の内容と重複していないかをチェックすることができます。
もう一つの目的は、技術革新の促進です。
特許出願が公開されることで、その技術内容が広く知られるようになります。
その結果、企業は、その技術を改良したり、新たな発明を生み出すきっかけにすることができます。
公開のタイミング
特許出願は、審査の有無にかかわらず、出願日から1年6ヶ月後にその内容が公開されます。
これにより、他社がその技術を把握することができます。
また、出願人が公開の請求を行うことで、1年6ヶ月が経過するよりも前に公開することもできます。
公開により仮保護を受けることができるので、早期に仮保護を受けることを望む企業にとっては、この請求は非常に重要な戦略の一つです。
また、特許が成立すれば、これに伴って特許の内容が公開されます。
例外的な非公開制度
しかし、常に上記ルールで公開が行われるわけではありません。
日本国内では1948年に秘密特許制度が廃止されましたが、国際的な合意により特例が設けられています。
それが「日米防衛特許協定」です。
この協定により、米国で秘密とされた特許出願に対応する日本国内の特許出願は、米国での秘密保持が解除されるまで、公開されないことがあります。
これにより、防衛に関わる技術情報が無用に流出することを防ぐという目的があります。
長期間非公開の事例
驚くべき例として、「製法及び応用を含む圧電セラミック材料」に関する特許出願(特願昭63-800002)があります。1988年に出願されたこの特許は、20年4カ月後の2008年にようやく公開されました。
これは、潜水艦の聴音装置などに使用される技術として、米国企業によって出願されたものです。
この長期間に及ぶ非公開は、国際協定のもとで特別に取り扱われた事例であり、一般の出願とは大きく異なります。
その他にも、以下の案件が1年6ヶ月を超えて秘密にされています。
特願昭63-800001 14年
特願昭63-800003 6年7ヶ月
特願昭63-800004 8年3ヶ月
新たな特許出願非公開制度
日本国内では1948年に秘密特許制度が廃止されましたが、これからの経済安全保障を考慮し、新たな特許出願非公開制度が2024年5月から導入されます。
この制度は、機微技術の流出を防ぐために、特定の特許出願内容を非公開にすることができます。
新たな特許出願非公開制度についてはこちらをご参照ください。
特許出願非公開制度について
まとめ
特許出願の公開は、他社により開発された技術の共有と、自社の知的財産の保護という2つの側面から極めて重要です。
しかし、国防に直結する技術に関しては、特例としてその公開やその時期が制限されることがありますので覚えておいてください。