AIにロゴを作ってもらうとします。
「先進的で、信頼感があって、シンプルなIT企業のロゴ」
今の生成AIなら、それなりにきれいな案がいくつも出てくるでしょう。
では、別のIT企業も、
- 「先進的」
- 「信頼感」
- 「シンプル」
- 「プロフェッショナル」
と頼んだらどうなるのか。
さらに100社が、それぞれAIでロゴを作ったら。
もちろん、全部が同じロゴになるわけではありません。
ただ、一社ずつ見ればよくできているのに、100社並べると何となく似た方向へ集まる、ということはないのだろうか。
前回、AIロゴの問題を「AIはデザインが上手いか、下手か」ではなく、「ブランドマークとして何を失いやすいか」と置き直しました。
そのとき最初に気になったのが、この「平均化」です。
将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
一つの出来と、並べたときの違い
ロゴを一案だけ見るなら、
- きれいか。
- バランスがいいか。
- 今っぽいか。
- 会社のイメージに合っているか。
といった評価ができます。
どれも大切です。
ただ、ブランドマークには、もう一つ仕事があります。
他と見分けられることです。
一つ一つの完成度が上がることと、全体として多様になることは同じではありません。
一社ずつ見れば、以前より上手い。
でも、100社並べると、以前より見分けにくい。
そんなことも理屈としてはあり得ます。
個々が良くなっても、全体が多様になるとは限らない
この点で興味深い研究があります。
DoshiとHauserが2024年にScience Advancesで発表した研究では、293人に短い物語を書いてもらい、AIを使わないグループ、GPT-4から一つのアイデアを得られるグループ、最大五つのアイデアを得られるグループを比較しました。
AIのアイデアを利用できた作品は、平均すると創造性や文章の出来などで高く評価されました。
ところが、別のことも起きています。
AIを利用できたグループの物語は、AIを使わなかったグループより、作品同士の内容が似ていました。研究では文章の埋め込み表現を使って作品同士の類似性を比較しています。
つまりこの実験では、
個々の作品の評価が上がることと、集合としての多様性が下がることが、同時に起きました。
ここが、ブランドマークを考えるうえで気になります。
もちろん、これはロゴの研究ではありません。
AIを使ったロゴ生成そのものを扱う研究もありますが、ここで考えている「複数企業がAIを使ったとき、ブランドマークが集合として似た方向へ収束するか」とは別の問題です。
したがって、この研究から「AIでロゴを作ると平均化する」とは言えません。
ここでは、あくまで仮説として考えています。
ブランドマークでは「上手い」だけでは足りない
例えば、
- 先進的。
- 信頼感。
- シンプル。
- プロフェッショナル。
どれも、企業がロゴに求めるものとしておかしくありません。
AIも、こうした言葉から「それらしいもの」を作るのがかなり上手です。
でも、同じ業界の会社がみんな同じような言葉を入力したらどうなるのか。
ブランドマークとしては、そこも確かめておきたいところです。
- どれもモダン。
- どれも洗練されている。
- どれも信頼できそう。
でも、昨日見た会社がどこだったか思い出せない。
それでは、一枚のデザインとしては上手でも、ブランドマークとして十分に働いているとは限りません。
AIロゴについて考え始めたとき、問題になるのは、AIが変な形を作ることだと思っていました。
今は、むしろ別の方が気になっています。
AIロゴで気になるのは、変なロゴを作ることより、普通に上手なロゴが同じ方向へ大量に作られることなのかもしれない。
まだ仮説です。
だから「AIを使うとロゴが似る」と断定するつもりはありません。
ただ、
個別に見て上手いことと、
競合の中で違って見えること。
この二つは、分けて評価した方がよさそうです。
競合の横に置いてみる
AIでロゴ案をいくつも作ったら、最後に一つ、簡単にできることがあります。
気に入った案だけを大きく表示するのをやめる。
競合する会社のロゴを20社くらい並べて、その中へ置いてみる。
そこで、
- 目に残るか。
- 後から思い出せるか。
- 似た雰囲気の会社に埋もれないか。
を見る。
単独ではきれいに見えていたものが、急に普通に見えるかもしれません。
逆に、一案だけでは少し癖が強いと思ったものが、並べてみると意外によく残ることもあるでしょう。
ブランドマークは、一社だけで存在するものではありません。
だから私は、AIでロゴを選ぶなら「どれが一番きれいか」だけではなく、競合の横に置いてから、もう一度見た方がいいと思います。
「似ていない」と「違って見える」は同じなのか。
次は、そこを考えてみます。
本シリーズのブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
・AIで作ったロゴは、本当に「気持ち悪い」のか
