こんにちは、弁理士の渡部です。
本日は、大河ドラマと武将の名前の商標登録についてお話をします。
武将の名前は商標登録できるのか?
小栗旬さん主演、話題の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が始まりました!
鎌倉市の観光協会も、北条義時をキャラクター化した「義時くん」について商標出願(商願2021-132498)をしています。
いま鎌倉を回るとあちこちで義時くんを見ることができます。
さて、北条義時のような武将の名前は、商標登録を受けることができるでしょうか。
結論は、かなり難しいです。
有名な武将の名前は由来する土地において、地域の人に愛される文化遺産のようなものであるので、商標登録で一企業が独占するのではなく地域の皆が使えるようにした方がよいわけです。
ですので、武将を特定できるフルネーム「北条時政」や「北条義時」などは、商標登録を受けられません。
名前だけでも武将を特定できるようなビッグネーム「信長」「秀吉」「家康」「頼朝」などは、名前だけでもアウトです。
武将を特定できなければOK
逆にいうと、武将を特定できなければ登録の可能性があるわけです。
平成29年大河ドラマは「女城主 直虎」でしたが、記憶にある方もいらっしゃると思います。
実は、商標「直虎」については、長野県の味噌製造会社が商標登録を受けていたのですが、これに対し、ドラマの舞台となった静岡県浜松市が「直虎」の商標登録について異議申し立てを行った、という事件がありました。
せっかくドラマの舞台になったのに、浜松市内の事業者が「直虎」を使えなかったからです。
しかし、特許庁は、浜松市の異議申し立てを退けました。
「直虎」からは、必ずしもドラマの主人公である「井伊直虎」を特定できない、という理由です。
実際、長野県の味噌製造会社は長野県須坂藩藩主である「堀直虎」にあやかって「直虎」の商標登録を受けたもので、「直虎」は「井伊直虎」とイコールで結ばれるほど、有名な武将とはいえないと判断された、ということです。
武将の名前を一部に含む商標
では、武将の名前を一部に含む商標はどうでしょう。
このような商標出願はかなり多く、人気のある商標です。
例えば、「頼朝まんじゅう」「秀吉カフェ」。
こういう商標も、登録は難しいです。
まんじゅうやカフェを事業として取り扱う際に「頼朝」や「秀吉」の名前を独占させることになるからです。
一方で、「知財で家康」のように、全体として特徴が出てれば登録の可能性が出てきます。
「信長の野望」などは有名なゲームですね。
当然に商標登録が認められています。
まとめ
まとめると、武将の知名度に乗っかるような商標や、地域興しなどの事業の妨げになるような商標は登録が認められません。
武将の名前を使った商標登録を検討する場合は、「直虎」のように武将を特定できない名称にするか、「信長の野望」のように全体として特徴を出すような工夫をしましょう。
以下、本記事のまとめです。
・武将の名前は商標登録が認められない。
・武将を特定できない名称や、他の言葉と組み合わせて特徴が出る名称なら商標登録が認められる。