お馴染みの「きのこの山」をモチーフにしたワイヤレスイヤホンの模倣品がオンラインで不正に販売されています。
ブランドと商標の保護は、企業の信頼性と市場での地位を守るために不可欠です。
模倣品による損害は計り知れず、消費者の信頼を損なうだけでなく、企業の収益にも影響を及ぼします。
この記事では、模倣品のリスクと、それに対する効果的な対策について解説します。

この記事を書いた人

弁理士 渡部 仁（Hitoshi Watabe）

将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。

大人気「きのこの山」イヤホン、発売前に模倣品が横行！

明治は、人気のチョコレート菓子「きのこの山」をモチーフにした「きのこの山ワイヤレスイヤホン」の模倣品がオンラインで不正に販売されていると発表しました。
この商品は、明治の公式商品ではなく、明治の商標を無断で使用した模倣品です。

2023年11月17日、明治社は「きのこの山」の形をしたワイヤレスイヤホンの販売計画を発表しました。
この公式商品は2024年3月下旬に発売予定で、現在はまだ市場に出ていません。
写真は、明治が発表した公式商品の試作品です。

引用：日経新聞HP

しかし、公式商品の発売に先立って、同社の商標「meiji」「きのこの山」を無断で使用した模倣品が販売されたということです。

明治の対応

明治は、この模倣品には一切関与しておらず、公式商品とは無関係であり、消費者が誤って購入しないように注意を呼びかけています。
万が一、模倣品を購入してしまった場合、明治社は交換や損害賠償の責任を負わないとしています。

この模倣品は、明治が販売サイトに対する権利侵害の申し立てにより、現在は販売サイトから削除されています。
しかし、今後も似たような模倣品が出現する可能性があります。
明治は、今後も自社の商標を無断で使用した模倣品が見つかった場合、法的措置を含む厳正な対応を取るとしています。

なぜ立体商標が効かないのか？

「きのこの山」といえば、長年の販売実績が評価され、立体商標の商標登録が認められた数少ない事例の一つです。
明治は権利侵害の申し立てを行いましたが、この立体商標が、きのこの山の形状を模倣した商品に対して大きな力を発揮したのでしょうか？
多くの人がその効果を期待しています。

引用：J-PlatPat

きのこの山の立体商標は、その独特の形状に商標登録が認められています。
そのため、明治以外の他社が同じ形状の商品を販売することはできないはずです。
しかし、今回の立体商標の活躍の場はなかったようです。
きのこの山の立体商標の登録内容（第6031305号）を見ると、指定商品は「チョコレート菓子」と記載されており、それに限定されています。

つまり、きのこの山の立体商標が力を発揮できるのは、その形状を模倣したチョコレート菓子に限られるのです。
今回の模倣品は、「きのこの山ワイヤレスイヤホン」ということから、ワイヤレスイヤホンであり、チョコレート菓子ではないため、立体商標の保護範囲外となります。

そうなると、立体商標が無意味だと思われがちですが、さにあらず。
チョコレート菓子の形状を守ることができるだけでも、明治にとっては大きな価値があります。
日本では、その形状のお菓子を販売できるのは明治だけです。
このため、消費者は、その形状のチョコレート菓子を見るだけで明治のブランドを連想することができるのです。
これは非常に強力な宣伝効果を持っています。

権利侵害の申し立てに用いられた権利

ちなみに、今回の権利侵害の申し立てについては、何の権利が用いられたのかということですが、明治は、商標「きのこの山」（※立体商標ではなく文字の商標）「meiji」についてワイヤレスイヤホンを保護範囲とする商標登録（第5994108号、第4584996号）を持っていますので、これを使ったのではないかと考えられます。
「きのこの山」や「meiji」の文字が模倣品やその広告に表示されていたとしたら権利侵害です。

本物と模倣品の見分け方

以下の場合は模倣品である可能性が高いので注意が必要です。
・公式サイトや公式SNS以外で販売されている商品である場合
・商品説明やパッケージに誤字脱字がある場合
・価格が不自然に安い場合

待望の公式商品、発売は間もなく！

公式商品「きのこの山ワイヤレスイヤホン」は、明治の公式アカウントが提案した「ありそうでなかった商品」の1つで、多くの方の要望に応えて実際に商品化が決定しました。
イヤフォン型のリアルタイムAI翻訳機を製造するウェザリージャパンが開発と製造に協力しています。
このイヤホンは、同時翻訳機能を備えており、多言語間のコミュニケーションを支援することを目的としています。
販売方法、数量、価格についてはまだ未定ですが、発売が待ち遠しい商品です。

模倣品に騙されないように、公式情報に注意して、本物の「きのこの山ワイヤレスイヤホン」の発売を楽しみに待ちましょう！

きのこの山について解説したブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
・きのこの山ワイヤレスイヤホンは立体商標の登録を受けられるか？
・優れたブランド名にみる「きのこの山」
・きのこの山ワイヤレスイヤホン転売の商標権侵害リスク
・きのこの山ワイヤレスイヤホンは意匠登録を受けられるか？
・お菓子からイヤホンへ、愛されるブランド「きのこの山」の革新的な進化

姉妹品「タケノコの里」の立体商標について解説したブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
・知財でござる第20巻「奇跡の立体商標登録！たけのこの里」をUPしました！
・「たけのこの里」あの形に商標登録が！？42年の時を経て勝ち取ったわけ