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きのこの山ワイヤレスイヤホンは意匠登録を受けられるか?

「きのこの山ワイヤレスイヤホン」が発売と同時に完売する程の人気を博し話題となっています(ニュース)。
このワイヤレスイヤホンは、お菓子のきのこの山をモチーフにしたものですが、果たして意匠登録を受けられるのかどうか、気になる方もいるかもしれません。
本記事では、きのこの山ワイヤレスイヤホンが意匠登録を受けられるかどうかについて考えてみます。

この記事を書いた人
弁理士 渡部仁

将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。

意匠登録の2大登録要件

まず、意匠登録を受けるためには、いくつかの登録要件を満たす必要があります。
具体的には、新規性と創作非容易性という2つの要件があります。

1. 新規性
出願前に知られた意匠(以下「公知意匠」という。)と同一又は類似でないこと

2. 創作非容易性
公知意匠から容易に創作できないこと

きのこの山ワイヤレスイヤホンの新規性について

新規性について考えてみましょう。
きのこの山ワイヤレスイヤホンが出願されたのは、試作品を発表する直前の2023年11月と仮定します。
その時点で、他の企業から同じような形状のワイヤレスイヤホンはまだ発売されていませんでした。
つまり、きのこの山ワイヤレスイヤホンは、公知意匠とは異なる形状であると考えられます。
したがって、新規性はクリアできそうです。

きのこの山ワイヤレスイヤホンの創作非容易性について

次に、創作非容易性について考えてみましょう。
この要件は、新規性よりもハードルが高くなります。
新規性は、商品「ワイヤレスイヤホン」のデザインとして、似たような公知意匠があるかどうかをみるのに対し、創作非容易性は、商品の枠組みを超えて、似たような公知意匠があるかどうかや、それらを単純に組み合わせてできた意匠であるかどうかをみるからです。

創作非容易性が否定される典型的な例が7つあります。

1. 置き換え
公知意匠の構成要素の一部を他の公知意匠に置き換えることです。

2. 寄せ集め
複数の公知意匠を組み合わせて、一の意匠を構成することです。

3. 一部の構成の単なる削除
公知意匠の創作の一単位として認められる部分を、単純に削除することです。

4. 配置の変更
公知意匠の構成要素の配置を、単に変更することです。

5. 構成比率の変更
公知意匠の特徴を保ったまま、大きさを拡大・縮小したり、縦横比などの比率を変更することです。

6. 連続する単位の数の増減
繰り返し表される公知意匠の創作の一単位を、増減させることです。

7. 物品等の枠を超えた構成の利用・転用
既存の様々なものをモチーフとし、ほとんどそのままの形状等で種々の物品に利用・転用することです。

このうち「7. 物品等の枠を超えた構成の利用・転用」には、NG例として、公知の卓上電子計算機の形状を、ほとんどそのままチョコレートとして表したに過ぎない意匠が挙げられています。

【事例6】「チョコレート」 引用:意匠審査基準

きのこの山ワイヤレスイヤホンは、パターンとしてはこの逆です。
すなわち、お菓子のきのこの山の形状を、ほとんどそのままワイヤレスイヤホンとして表したに過ぎない意匠である場合は、創作非容易性が否定されてしまいます。

では、きのこの山ワイヤレスイヤホンは、お菓子のきのこの山の形状を単純に転用しただけなのでしょうか?
実は、それは違います。

イヤホン開発のデザイン変遷 引用:明治社HP

写真は、きのこの山ワイヤレスイヤホンのデザインのバージョンです。
初号機から5回のバージョンアップを経て最終デザインとなっています。

最終デザインをみると、お菓子のきのこの山の形状そのものではなく、きのこの傘の部分が半分はきのこ型であり、残り半分はイヤピースになっています。
傘の半分からイヤピースが飛び出している形状は、ワイヤレスイヤホンのデザインとして斬新さを与えます。

この点を評価すれば、きのこの山ワイヤレスイヤホンは、公知意匠から容易に創作できないと考えられます。
したがって、創作非容易性もクリアできそうです。

以上より、きのこの山ワイヤレスイヤホンは、新規性、創作非容易性という大きな要件を満たしているので、意匠登録を受けられる可能性が高いといえるでしょう。

模倣品の出現と出願のタイミング

ただし、この話は2023年11月に出願した場合の話です。

試作品が発表された後に模倣品が発売されたことは、前のブログでご紹介しましたが、出願前に模倣品が存在する場合、模倣品の存在によって新規性や創作非容易性が否定されてしまう可能性があります。

ですから、意匠登録を考える場合は、試作品などを発表する前に出願することが非常に重要です。
模倣品が出現した後に出願すると、似たようなデザインである模倣品が公知意匠となってしまうからです。

まとめ

意匠登録を受けられるかどうかは、先に発売された商品のデザインとの関係性や出願のタイミングなどによって変わってきます。
きのこの山ワイヤレスイヤホンは、多くの人々に愛されることが期待されます。
意匠登録を受けることで独自性を守りながら商品を展開することができるかもしれません。
ぜひ、成功を祈っています!

きのこの山について解説したブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
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