AIにロゴを作ってもらうとき、まずプロンプトを考えます。
- 信頼感がある。
- シンプル。
- 先進的。
- 親しみやすい。
では、そこから会社名だけを外してみます。
その条件は、競合する別の会社にも、ほとんどそのまま当てはまらないでしょうか。
もしそうなら、AIへ渡しているのは「その会社の情報」というより、その業界の会社なら広く当てはまりそうな条件なのかもしれません。
だとすると、問題はAIが平均的なロゴしか作れないことではありません。
そもそも、こちらが平均的な条件しか渡していない。
今回は、AIが何を作れるかではなく、その前に人間側が何を渡し、何を基準に選ぶのかを考えてみます。
将星国際特許事務所、所長。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業のブランディングと商標登録の支援に数多く携わっている。特許はAI、IT、ビジネスモデルを専門とする。講演活動も積極的に行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
目次
AIに「業界らしさ」を頼むのは簡単です
「環境に優しい会社」
「信頼感のある法律事務所」
「先進的なテクノロジー企業」
こうした言葉は、AIへ指示するときに使いやすいものです。
ただ、信頼感、先進性、シンプル、親しみやすさ、プロフェッショナルといった言葉は、多くの会社に当てはまります。
AIに渡している情報が、
「この業界の会社なら、だいたい当てはまりそうなこと」
だけなら、出てくる案も「業界らしいもの」になりやすい。
むしろAIは、こちらが頼んだ「それらしさ」を返しているとも考えられます。
「業界らしい」と「その会社らしい」は違う
同じ業種でも、会社はかなり違います。
例えば同じ法律事務所でも、長い歴史を大切にしているところもあれば、対応の速さを重視しているところもある。特定の業界へ深く入り込むことを強みにしているところもあります。
どこも「信頼感のある法律事務所」かもしれません。
しかし、その一言では違いが消えてしまいます。
人間側でまだ整理されていない違いを、AIが自動的に見つけ、ロゴへ反映してくれるとは限りません。
AIロゴを考えるとき、実はこちらの方が重要なのではないかと思います。
何を出してほしいかだけでなく、何を捨てるか
では、何をAIへ渡せばよいのでしょうか。
会社のことをすべて言語化したり、難しいブランド理論を一から作ったりする必要はありません。
少なくとも、
- この会社は何を大切にしているのか。
- 競合と比べて、どこが違うのか。
- これから事業をどちらへ伸ばしていきたいのか。
そのあたりが整理されるだけでも、条件はかなり具体的になります。
例えば、
「信頼感のある会社」
ではなく、
「初めて専門家へ相談する小規模事業者が、緊張せずに話せることを大切にしている」
のであれば、同じ「信頼感」でも意味が変わります。
また、今後事業の方向が変わるのであれば、これからそのロゴに何を担ってほしいのかも変わるかもしれません。
もちろん、こうした情報をAIへ渡せば、そこから特定の形が機械的に決まるわけではありません。
大切なのは、
「この会社の場合、何を基準に案を出し、何を基準に捨てるのか」
が見えやすくなることです。
AIへ渡す情報は、選ぶときにも使う
この整理は、プロンプトを書くためだけのものではありません。
AIで何十案も作れば、次には「どれを選ぶか」という問題が出てきます。
そのとき、
「どれが一番きれいか」
だけで選ぶと、また一般的な評価へ戻ってしまいます。
そこで、最初に整理した条件を選択基準として使います。
- この会社が大切にしているものと合っているか。
- 競合との違いが見えるか。
- これからの事業にも使えそうか。
そして、
「なぜ、この会社がこの形を選ぶのか」
を説明できるか。
例えば、
「先進的で、信頼感があり、シンプルだから選びました」
という説明しかできないとします。
ここで、会社名を競合企業へ入れ替えてみます。
それでも同じ説明がそのまま成立するのであれば、まだ「その会社らしさ」まで届いていないのかもしれません。
すべてに意味を込める必要はない
もっとも、ロゴのすべてに最初から明確な意味が必要だとは思いません。
この線は企業理念の何を表し、この角度には創業者の思いが込められている――そこまで一つずつ説明できなくてもよいでしょう。
また、「その会社らしさを全部ロゴへ描き込む」という話でもありません。
ブランドマークは、使い続けるうちに、その形と会社や商品との結びつきができていくものでもあります。
それでも、数ある候補の中から、なぜこの会社がこの形を選ぶのか。
その判断材料がなければ、結局は「何となく格好いいもの」を選ぶことになります。
AIが100案を出してくれても、それでは選ぶ側の問題はあまり解決しません。
AIに頼む前の仕事がある
AIでロゴを作るとなると、ついプロンプトの書き方を考えたくなります。
- 指示を具体的にする。
- 参考画像を渡す。
- 何度も生成する。
もちろん、それも必要です。
でも、その前に、
「自分たちは、どんな会社なのか」
を少し整理しておく。
AIへ何を出してほしいのかだけでなく、何が出てきたら捨てるのかも考えておく。
そして生成されたあとも、
「きれいだから」
で終わらせず、
「なぜ、この会社がこの形を選ぶのか」
を考える。
AIでロゴを作る仕事は、画像を生成するところからではなく、その少し前から始まっているのだと思います。
本シリーズのブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
・AIで作ったロゴは、本当に「気持ち悪い」のか
・上手なのに、覚えられない――AIロゴで気になる「平均化」
・「似ていない」と「違って見える」は同じではない――商標とブランドの距離
・ロゴを24pxにしてみる――小さくしてもブランドは残るか
