AIロゴをブランドとして考える[8/8]
ここまで、AIで作るブランドマークについて、いくつかの角度から見てきました。
- 競合の中で埋もれないか。
- 小さくしても特徴が残るか。
- その会社らしさが入っているか。
- 実際にどの形を使い、何を商標として守るのか。
- 著作権など、別の権利はどう考えるのか。
こう並べると、
「では、AIでロゴを作らない方がいいのでは」
となりそうです。
でも、私はそこまでは考えていません。
むしろ、AIを使うか、人間が作るかという二択だけで考えることの方が、少し違うように思います。
考えたいのは、
どの工程をAIに任せ、どこで人間が判断するのか。
ということです。
将星国際特許事務所、所長。商標・ブランディングを専門とする。ブランド・マネージャーの資格を持ち、中小企業を中心に商標登録からブランディングまで幅広く支援している。講演活動も行っており、神奈川県優良産業人表彰を受賞している。
目次
AIは、方向性を試すところで使いやすい
ブランドマークを考えるとき、最初から一つの形に決める必要はありません。
- もっと固い印象にしたらどうなるか。
- 文字を中心にしたらどうか。
- 図形だけならどう見えるか。
AIを使えば、こうした異なる方向性を試し、目に見える形にして比較することができます。
「これは違う」
「こちらは少し近い」
「この方向は考えていなかった」
そうやって検討材料を作る場面では、AIは使いやすいと思います。
ただし、案が増えれば、次の問題が出てきます。
どれを選ぶのか。
作れることと、選べることは別です。
選ぶには、人間側に基準が必要になる
前の記事では、「信頼感」「先進的」「シンプル」といった一般的な言葉だけでなく、その会社固有の条件を考えました。
これは、AIへ指示するときだけの話ではありません。
出てきた案を選ぶときにも必要になります。
- その会社が何を大切にしているのか。
- 競合と何が違うのか。
- これからどのような事業をしていきたいのか。
こうした基準があれば、
「何となく格好いいから」
だけではなく、
「なぜ、この会社がこの形を選ぶのか」
を考えることができます。
AIが多くの案を作れることと、その中から適切なものを選べることは同じではありません。
むしろ候補が増えるほど、選ぶ側の基準が重要になります。
候補が絞れたら、別の条件でも確かめる
候補が絞れてきたら、一番きれいに見える状態だけで評価しない方がよいと思います。
- 競合企業のロゴと並べる。
- 小さく表示する。
- 色や背景を変える。
- 実際に使われる場面に近い条件へ置いてみる。
そうすると、単独の完成画像だけでは見えなかった特徴や弱点が見えてきます。
この段階では、先行商標との関係も確認します。
せっかく候補を決めても、後から既存の商標との関係で問題が見つかれば、名称やデザインを見直すことになるかもしれません。
最終的な形を固める前に、確認できるものは確認しておく方が自然です。
画像ができても、その後の判断は残る
ブランドマークの候補が固まってきたら、次は実際にどう使うのかを整理します。
- 社名文字だけでも使うのか。
- 図形だけでも使うのか。
- 常に組み合わせて使うのか。
使用する形が分かれば、何を商標として出願し、どの部分を守るのかも考えやすくなります。
また、AIを利用しているのであれば、商標だけでなく、著作権、利用したサービスの条件、第三者の既存権利との関係なども、必要な範囲で確認します。
ここまで来ると、AIに画像を生成させることは、ブランドマークを完成させる工程の一部分にすぎないことが分かります。
画像を作ることと、それをブランドマークとして評価し、使い方を決め、権利を確認することは別の仕事です。
AIでできることと、自分で判断できることは別
そして、もう一つ分けておきたいことがあります。
AIを使って自分でできることが増えることと、自分で適切に判断できることが増えることは同じではありません。
例えば私は弁理士なので、商標や知的財産については専門家として検討できます。
一方、造形の細かな調整や、デザインとしての完成度について、デザイナーと同じ専門的判断ができるわけではありません。
必要であれば、そこはその領域の専門家へ渡します。
AIを使えば、これまで自分では作れなかったものを試せるようになります。
しかし、作れるようになったからといって、その成果物のすべてを自分で評価できるようになるわけではありません。
だから、
どこまでAIに任せるか。
だけではなく、
どこまで自分で判断できるのか。
も一緒に考える必要があります。
そして、その先には、
どこから専門家へ渡すのか。
という判断もあります。
誰が最初に作ったかより、どこで完成させるか
この連載の最初では、
- AIにロゴを作らせるのか。
- 人間のデザイナーに作ってもらうのか。
そんな二択にも見えました。
でも、一つずつ見ていくと、ブランドマークができるまでには、その後にもいくつもの判断があります。
- 会社について整理する。
- いくつかの方向性を試す。
- 候補を選ぶ。
- 競合や実際の使用環境の中で確かめる。
- 先行商標との関係を確認する。
- どの形を使うか決める。
- 必要な権利を確認する。
- そして、自分では判断できないところがあれば、適切な専門家へ渡す。
これは「唯一の正しいロゴ制作工程」という意味ではありません。
今回の連載から見えてきた、確認すべき工程の一例です。
問題は、誰が最初の形を作ったかだけではないのだと思います。
ブランドマークとして、どこで判断し、どこで完成させるのか。
AIを使うなら、
- ここはAIで試す。
- ここは自分たちで決める。
- ここは専門家に確認する。
そうやって工程ごとに考える。
AIに全部任せるか、まったく使わないかという二択より、その方が実際のブランドマークづくりに近いように思います。
AIによって人間の仕事がなくなるというより、少なくともブランドマークづくりでは、人間が判断する場所が変わってきている。
今のところ、私はそんなふうに見ています。
本シリーズのブログ記事です。こちらもよろしければご参照ください。
・AIで作ったロゴは、本当に「気持ち悪い」のか
・上手なのに、覚えられない――AIロゴで気になる「平均化」
・「似ていない」と「違って見える」は同じではない――商標とブランドの距離
・ロゴを24pxにしてみる――小さくしてもブランドは残るか
・その会社らしさを、AIに渡せているか――「それらしいロゴ」ができる理由
・AIで作ったロゴ、どの形で商標登録するか
・商標登録できても、著作権で守れるとは限らない――AIロゴの権利を分けて考える
